概要
AWSは8月31日、自社開発の第5世代Armチップ「Graviton5」を搭載したメモリ最適化EC2インスタンス「R9g」「R9gd」の一般提供を開始したと発表した。前世代Graviton4を搭載する「R8g」と比較して、vCPUあたり最大25%の計算性能向上を実現しており、インメモリキャッシュやリアルタイムのビッグデータ分析、メモリ集約型データベースなど、大容量メモリを要求するワークロード向けに設計されている。R9gdはR9gに加えてNVMe SSDのローカルストレージを備えるバリエーションで、両者とも新規インスタンスファミリーとして同時にリリースされた。
Graviton5の技術的な強化点
Graviton5最大の特徴は、メモリサブシステムの大幅な刷新にある。メモリ規格はGraviton4のDDR5-5600からDDR5-8800へと引き上げられ、メモリ帯域幅は前世代比で約1.6倍に向上した。加えてL3キャッシュ容量は5倍に拡大されており、大規模なワーキングセットを扱うアプリケーションでのキャッシュミス削減に寄与する。ネットワークおよびEBS帯域幅も最大2倍に強化され、最大サイズのr9g.metal-48xlではネットワーク帯域100Gbps、EBS帯域72Gbpsに達する。パケット処理性能についても最大3倍の向上が図られており、ネットワークI/Oが律速となりやすいワークロードでの改善が見込まれる。これらの強化はエネルギー効率の改善とも両立しており、AWSはコストパフォーマンスと消費電力の両面でのメリットを強調している。
インスタンスラインナップと対象ワークロード
R9g/R9gdは、最小のr9g.medium(1vCPU、メモリ8GiB)から最大のr9g.metal-48xl(192vCPU、メモリ1536GiB)まで、計11サイズが用意されている。R9gdはこれに加えてNVMe SSDによるローカルインスタンスストレージを搭載し、一時的な高速ストレージを必要とするワークロードに対応する。想定される主な用途としては、RedisやValkeyといったインメモリキャッシュ、リアルタイムの大規模データ分析、Kubernetes・ECS・EKS上で稼働するコンテナ化マイクロサービス、そしてメモリ集約型データベースが挙げられている。いずれもメモリ帯域とキャッシュ容量の拡大が性能に直結する用途であり、Graviton5の設計思想を反映したラインナップといえる。
提供リージョンと今後の展開
現時点でR9g/R9gdが利用可能なリージョンは、米国東部(バージニア北部、オハイオ)、米国西部(オレゴン)、欧州(フランクフルト)の4リージョンにとどまる。価格については具体的な数値は公表されておらず、詳細はAmazon EC2の料金ページを参照する形となっている。AWSはこれまでもGravitonシリーズを段階的に他リージョンへ拡大してきた経緯があり、R9g/R9gdについても今後提供リージョンが順次拡大されるとみられる。DDR5-8800やL3キャッシュ5倍拡大といった仕様は、メモリボトルネックが顕著になりやすいクラウドネイティブなワークロードにおいて、Gravitonファミリーの競争力をさらに高める要素となりそうだ。