概要

Appleは9月1日、ティム・クック氏がCEOを退任してExecutive Chairman(会長職)に移り、ハードウェアエンジニアリング担当上級副社長を務めてきたジョン・ターナス氏(51)が新CEOに就任したと発表した。Appleの公式リーダーシップページも即座に更新され、取締役会の顔ぶれにはクック氏、アーサー・レビンソン氏、ワンダ・オースティン氏、アレックス・ゴースキー氏、アンドレア・ジャング氏、モニカ・ロザーノ氏、ロン・シュガー氏、スー・ワグナー氏、そしてターナス氏本人が名を連ねる。ターナス氏はCEO就任に伴い取締役会の議席も得た。クック氏は2011年にスティーブ・ジョブズ氏の後任としてCEOに就いて以来15年余りにわたり同社を率いており、外部招聘ではなく社内昇格による継承という点で、Appleらしい安定志向の交代劇となった。

ターナス氏の経歴とキャリア

ターナス氏は2001年にApple製品デザインチームへ入社し、25年間にわたって在籍してきた生え抜きの技術者だ。2013年にハードウェアエンジニアリング担当バイスプレジデントに昇進し、2021年には上級副社長に就任。この間、AirPodsやApple Watch、Vision Proのハードウェア開発、IntelチップからApple独自シリコンへの移行、さらに直近では599ドルからの新型「MacBook Neo」の製造まで、Appleの主要ハードウェア戦略を一貫して主導してきた。かつてクック氏の指揮下で働いた経験を持ち、クック氏を自身の「メンター」と位置づけている。ペンシルベニア大学でエンジニアリングを専攻し、卒業研究では四肢麻痺患者が頭部の動きで操作できるフィーディングアームを開発するなど、早くから実用性を重視するエンジニア気質を示していた。2024年の同大学での講演では「常に自分は部屋の誰と同じくらい賢いと考えるべきだが、同じくらい知識があるとは考えるべきではない」と語っており、スティーブ・ジョブズ氏の職人気質、細部まで品質を追求する姿勢に強く影響を受けているという。

クック氏の新たな役割

クック氏はExecutive Chairmanとして取締役会に残り、各国の政策立案者との折衝など「同社の特定の側面を支援する」役割を担う見込みだ。CEOとしての最終日となった当日、クック氏はApple Park Visitor Centerを訪れ、小売部門の従業員と交流したと伝えられている。今回の交代は突然の解任ではなく、後継計画に基づく円滑な移行であることがうかがえる。

今後の展望

ターナス氏にとって、9月9日に予定される秋の製品発表イベントがCEOとして初めての主要な公の場となる見通しで、iPhone 18 Proや折りたたみ式iPhoneなど新製品ラインアップの発表を任されるとみられる。製品志向の強いターナス氏の下でAppleの経営スタイルが、クック氏時代のオペレーション重視からより製品開発を軸にした方向へとシフトする可能性が指摘されている。一方で、AI競争でのキャッチアップや、Vision Proで培った基盤技術の今後の活用方針など、経営者として取り組むべき課題は大きい。ターナス氏はまだ51歳であり、今後10年から15年程度の長期にわたって同社を率いる可能性もあるとみられている。