概要

Anthropicは8月30日から31日にかけて、Vidar、LummaC2、StealC、RedLine、Acreedといったインフォスティーラー型マルウェア(Windows向け)、および一部のmacOSデバイスを狙うAtomic Stealer(AMOS)が、ユーザーのPC上でブラウザのセッションCookieを盗み出し、Claudeアカウントへの不正アクセスに悪用されていたことを明らかにした。影響を受けたユーザーは、自分が使っていないにもかかわらず利用枠が回復してはまた消費される、という不審な挙動を報告していた。Anthropicは自社サービスやClaude自体がマルウェア感染の原因ではないと強調しており、感染は既にユーザーのPC上に存在していたものだとしている。

攻撃の仕組み

この攻撃の核心は、パスワードや二要素認証(2FA)を突破する必要がない点にある。2FAはログイン時の本人確認を保護するが、認証が完了した後、サービス側はユーザーをログイン状態に保つためのセッションCookieを発行する。インフォスティーラー型マルウェアはこのCookieをブラウザから直接コピーし、攻撃者はそれを「リプレイ」することで、あたかも既に認証済みのユーザーであるかのように振る舞い、ログイン処理そのものを経ずにアカウントへアクセスできてしまう。これにより2FAによる保護は事実上無効化される。マルウェア自体は非公式な配布元からのダウンロードや偽装アプリケーションを通じて侵入し、保存されたパスワード、ブラウザCookie、ローカルのアプリケーション認証情報を静かに窃取する汎用型の情報窃取ツールで、Claude専用に作られたものではない。実際に、被害を受けたユーザーの一人はロシアの闇フォーラムで海賊版ゲームをダウンロードしたことが感染経路だったと報告している。

Anthropicの対応とユーザーへの影響

Anthropicは被害が疑われるアカウントについて、すべてのセッションを強制的にログアウトさせて盗まれたセッションを無効化し、保存済みの支払い方法を削除、さらに不正に消費された利用分の返金を進めている。同社は「Claudeからサインアウトさせることは盗まれたセッションを止めるが、マルウェア自体を除去するものではない」と警告しており、感染したデバイスからマルウェアを完全に駆除しない限り、支払い方法を再登録しても再び被害に遭う可能性があるとしている。さらに、今後も不正利用の兆候が検知されればアカウントを再度ログアウトさせる場合があるとした。

今後の対策

Anthropicはユーザーに対し、マルウェアの検出・除去、メールアカウントのパスワード変更と2FAの有効化、ブラウザに保存済みのパスワードの更新、クレジットカード明細の不正利用確認、他の主要サービスでのアクティブセッションの見直しといった対策を推奨している。今回の情報窃取キャンペーンはClaudeに限らず、汎用型マルウェアがAIサービスを含むクラウドアプリケーション全般の認証情報を狙う脅威として広がっていることを示しており、エンドポイントのセキュリティ対策の重要性を改めて浮き彫りにしている。Anthropicは調査を継続中としており、今回の騒動に便乗したなりすましメールなどの二次被害にも注意するよう呼びかけている。