概要

DeepSeekは8月21日、実験的なマルチモーダルモデル「DeepSeek-V4-Flash-Vision-Exp」をAPIプラットフォーム上で公開した。テキスト処理性能は既存のV4-Flashと同水準を維持しつつ、UI自動操作やチャート分析といったエージェント向けタスクにおける画像理解能力を大幅に強化しており、マルチモーダルエージェント性能は「Opus-4.8に近づく」水準に達したとされる。中国のAIラボがテキスト中心の開発から、より汎用的な視覚対応AIシステムへと軸足を広げつつあることを示す動きとして注目されている。

技術的な詳細

最大の特徴は画像処理の効率性にある。DeepSeekが採用する独自の視覚圧縮フレームワークは、高密度な画像パッチではなく空間座標ベースのプリミティブを用いることで、画像1枚あたり最大384トークンという少なさで処理できるとされ、これは「GPTやClaudeの半分以下のコスト」に相当するという。API利用時はmodel='deepseek-v4-flash-vision-exp'を指定し、価格は既存のV4-Flashと同一に据え置かれている。入力形式はテキストと画像の混在に対応し、base64エンコード、外部URL、そして新たに導入されたFiles API経由での画像アップロードが可能だ。Files APIでは画像を一度アップロードしてfile_idで参照できるため、複数回のリクエストで同じ画像を再利用する際の効率が向上する。

メディアGeekParkによる実地テストでは、デザインモックアップをHTMLに変換する処理を26秒、スクリーンショットからインタラクティブなゲームを生成する処理を36秒で完了させるなど、複雑な視覚タスクをおよそ30〜35秒で処理できたと報告されている。一方で運用上の注意点も指摘されており、思考モード(reasoning)を有効にすると出力トークン予算をすべて消費してしまい、実際の応答が返らなくなる不具合が確認されている。開発者はこれを回避するためreasoning_effort: noneを明示的に設定する必要があるという。

背景と今後の展望

DeepSeekは主力モデルであるPro系列ではなく、より安価なFlash系列にこの視覚機能を投入した。これは、マルチモーダルなエージェント機能を自社エコシステム全体で低コストに展開する戦略的判断とみられる。中国のAI企業間では、Moonshot AIやアリババのQwenなども同時期に新モデルを発表するなど開発競争が激化しており、テキストベースの言語モデルにとどまらず、より有能で汎用的なAIシステムの開発で世界的なライバルとの競争が続いている。今回はあくまで「実験的(Exp)」版としての位置付けであり、正式版への統合や性能のさらなる改善が今後の焦点となりそうだ。