概要

NVIDIAは半導体カンファレンス「Hot Chips 2026」において、Grace CPUの後継となる自社製Armサーバー向けCPU「Vera」のアーキテクチャ詳細を公開した。Veraは新開発の「Olympus」コアを88基搭載し、NVLink-C2Cインターフェースを介してRubin GPUと統合される「Vera Rubin」プラットフォームの中核を担う。公開されたベンチマークでは、Linuxカーネルのコンパイル性能においてVeraが96コアのAMD EPYC 9655Pを14〜22%上回ったとされ、エージェント型AIワークロードを見据えた自社シリコン戦略の本格展開が印象づけられた。

技術的な詳細

Veraの設計思想の特徴は、コア数の最大化よりも1コアあたりのIPC(命令レベルの並列性)を優先した点にある。NVIDIAはAIエージェントによる推論やツール呼び出しなど、単一スレッド性能が重要となるワークロードが増えていることを設計判断の根拠として挙げている。メモリ面では8基の128ビットLPDDR5Xメモリコントローラを備え、帯域幅は約1.2TB/秒に達する。またダイ単体でのリティクル制限を回避するため、演算コアを1枚のモノリシックダイに集約しつつ、メモリ・I/O部分を別チップレットに分離する6ダイ構成が採用されている。NVIDIA独自のSPEC CPU 2026ベースの内部ベンチマークでは、エージェント型ワークロードで約1.8倍、データ処理ワークロードで約1.5倍の性能向上を主張している。セキュリティ面ではCPU・GPU・NICを統合した機密コンピューティング機能により、ラック全体を改ざん耐性のあるシステムとして扱える設計とした。

プラットフォーム全体としての位置づけ

NVIDIAはVera CPUとRubin GPUを、単体チップの性能競争ではなく「AI Factory」と呼ぶシステム全体の最適化課題として位置づけている。同社が並行して発表したネットワーク技術「Spectrum-X Multiplane」は、追加のスイッチ階層を設けずに最大51万2000基のGPUをまとめて接続できるとされ、8プレーン構成であれば1プレーンが障害を起こしても帯域幅の約9割を維持できるという。さらにデータセンターをまたいで接続する「Spectrum-XGS」は、複数拠点間のNCCL集合通信を1.9倍高速化するとしている。こうしたCPU・GPU・ネットワークの垂直統合により、コンテキスト処理からトークン生成、通信、ストレージ、セキュリティまでを一体で最適化する姿勢を強調した形だ。

今後の展望

今回発表されたVera CPUの性能値は現時点でNVIDIA自身が実施した内部ベンチマークに基づくものであり、第三者による独立検証はまだ示されていない。とはいえ、GPU一辺倒だった従来のAI基盤戦略から一歩踏み込み、CPU・GPU・ネットワークを自社設計でフルスタック化する動きは、AMDやIntelなど競合のデータセンター向けCPU事業にとって新たな脅威となりうる。エージェント型AIの普及に伴い、単一スレッド性能やレイテンシ最適化を重視したVeraのような設計が今後の業界標準になるかどうか、独立系ベンチマークの登場を含めて注目される。