概要
Google DeepMindの元従業員らが設立したロンドン拠点のAIスタートアップInherentが、270億パラメータの小型モデル「Faraday」を発表した。科学論文の結果を独力で再現するタスクにおいて、AnthropicのClaude Opus 4.8やOpenAIのGPT-5.5といったはるかに大規模なモデルを上回る性能を示したという。Inherentは4名の共同創業者のうち3名がDeepMindアルムナイで構成されており、King’s Crossのオフィスに約12名が在籍、年末までに20〜25名体制への拡大を計画している。
Faradayの技術的特徴
Faradayは中国Alibaba系のQwen 3.6をベースモデルとし、強化学習を活用した訓練方式で構築された。パラメータ数は270億と、比較対象となったClaude OpusやGPT-5.5と比べて大幅に小さい。チーフサイエンティストのEdward Hughes氏は、今回の結果について「最も興味深かったのは精度そのものよりも構築方法だった」と説明しており、単なるベンチマークスコアの向上ではなく、AIに「研究的直感」を習得させることを重視したモデル設計であることを強調している。この点は、パラメータ数を増やすことで性能向上を図る近年の大規模モデル開発のトレンドとは異なるアプローチとして注目される。
背景と今後の展望
Inherentは2026年5月に5,000万ドルのシード資金調達を発表しており、長期にわたる研究開発を経て今回ステルスモードから脱した。Hughes氏は英国で離職後に一定期間同業他社での就業を制限する「ガーデンリーブ」制度の撤廃を個人的に主張してきた人物としても知られ、この制度の壁を越えて起業に踏み切った経緯がある。Inherentは今後、協調的に人間の研究者と働ける「AI科学者エージェント」の開発を目指しており、ワールドモデル研究にも取り組んでいく方針を示している。小型モデルでも特定タスクに特化した訓練によって大規模モデルを上回る性能を実現できることを示した今回の発表は、AI開発における効率性重視のアプローチが今後さらに広がる可能性を示唆している。