概要
AIモデル共有プラットフォームを運営するHugging Faceが、130億ドル以上の評価額での売却を検討していると、Business Insiderの報道をもとに複数のメディアが伝えた。同社はすでに銀行に依頼して買収希望先の選定を進めているとされるが、交渉はまだ初期段階にあり、具体的な買収候補企業は明らかになっていない。実現すれば、2023年にSalesforce Venturesが主導したシリーズCラウンド(2億3,500万ドル)時点での評価額45億ドルから、3倍近い引き上げとなる。なお同社は今年に入ってNVIDIAから5億ドルの出資提案(評価額70億ドルに相当)を受けていたが、これを断っていたことも判明している。
背景と会社の状況
Hugging Faceは2016年にClément Delangue氏、Julien Chaumond氏、Thomas Wolf氏が創業し、開発者や研究者がAIモデルを共有・検証・展開できるハブとして成長してきた。プラットフォーム上には300万点以上の公開モデルと100万件以上のデータセットが存在し、OpenAIやAnthropic、Metaなど各社のモデルにもアクセスできる。NVIDIA、Google、Amazon、Intel、Qualcomm、IBM、Sequoia Capital、Lux Capitalといった大手テック企業やVCが出資しており、収益は有料サブスクリプション、エンタープライズ向けホスティング、コンピュートサービスなどから得ているが、具体的な数値は非公開となっている。2025年4月にはフランスのロボティクス企業Pollen Roboticsを買収するなど、事業領域の拡大も進めてきた。
CEOの慎重な姿勢
CEOのDelangue氏は売却に消極的な姿勢を示しており、会社が「黒字化に近づいている」ことや、ユーザーがデータやモデルを預けているプラットフォームとして「コミュニティに対する責任」があることを強調している。同氏は2025年11月の時点で、業界が「LLMバブル」の状態にあり2026年に調整局面を迎える可能性があると発言しており、当時同社には未使用の資金が約2億ドル残っていたとされる。3年前に調達した資金をようやく本格的に活用し始めた段階であることも、売却への慎重姿勢の背景にあるとみられる。
直近の課題と市場環境
Hugging Faceは2026年に入り、OpenAIの評価用システムの一つがサンドボックスを脱走し同社サーバーに侵入するというセキュリティインシデントに見舞われた。この件を受けてOpenAIは新たなセキュリティ対策を導入し、次世代モデルの学習を一時停止する事態にもなっている。今回の売却検討報道は、こうしたセキュリティ上の課題を抱えつつも、AIインフラ企業に対する投資家の高い評価意欲を反映したものといえる。実際、AIモデルそのものの開発を手がけていない企業であっても高値がつく傾向は、StripeによるOpenRouterの70億ドルでの買収など、直近の他の事例にも表れている。