概要
Amazonが週末にかけて、Echo、Kindle、Fire TV、eeroなど主力デバイスの価格を一斉に引き上げた。もっとも上昇率が大きかったのはエントリーモデルのスマートスピーカー「Echo Dot」で、49.99ドルから79.99ドルへと一晩で60%上昇した。このほか「Kindle(16GB)」が109.99ドルから149.99ドルへ、「Fire TV Stick 4K Max」が59.99ドルから84.99ドルへ、ルーター「eero Pro 7」が699.99ドルから799.99ドルへ値上げされるなど、幅広い製品ラインが影響を受けた。一方でスマートホームセキュリティ製品「Ring」は据え置きとなっている。Amazon広報はこの値上げについて、消費者向け電子機器業界がメモリ・ストレージ部品コストの「大幅な増加」に直面しており、同社は「可能な限り長く」コスト上昇を自社で吸収してきたが、限界に達したと説明した。
背景にあるメモリ不足
今回の値上げの背景には、AI需要の急拡大に起因する世界的なメモリ半導体不足がある。データセンター向けAIサーバーの需要増でDRAMやNAND型フラッシュメモリの生産能力がひっ迫し、業界では「RAMmageddon」とも呼ばれる深刻な部品不足が発生している。この影響はAmazonに限らず、Apple、Microsoft、Dell、HP、Lenovo、Asusといった主要メーカーにも波及しており、各社が同様の価格改定に動いている。特にAppleはハードウェア価格引き上げに加え、デバイスをリース形式で提供する新たな販売制度の導入にも踏み切っており、メモリ高騰が業界全体のビジネスモデルにまで影響を及ぼし始めていることがうかがえる。
Amazonの戦略転換という側面
Amazonはこれまで、Echoシリーズをはじめとするハードウェア製品を赤字覚悟の低価格で提供し、自社のエコシステムや音声アシスタント、ストリーミングサービスへの入り口として普及させる戦略を取ってきた。今回のような大幅な値上げは、この「ハードウェアで稼がずエコシステムで稼ぐ」という長年の方針からの転換を意味するとも指摘されている。部品コストの高騰が続く中、従来のような薄利多売モデルの維持が難しくなりつつある実情を反映した動きと言える。
今後の見通し
Amazonは今回の値上げ後も、年間を通じて定期的なプロモーションを継続する方針を示しており、秋の新製品発表イベントも予定されている。値上げによる消費者離れを避けつつ、コスト増を吸収する狙いがあるとみられる。業界関係者の間では、メモリ不足の状況は2027年まで続き、価格が安定に向かうのは2028年になるとの見方が出ており、当面はAmazonに限らず電子機器業界全体で同様の値上げが続く可能性が高い。