概要

Nvidiaは、AIコーディングスタートアップPoolsideのモデル開発ソフトウェア「Model Factory」を60億ドルでライセンス取得すると報じられた。これに加え、Lagunaと呼ばれる同社の独自オープンソースモデル開発に携わった109人の従業員に採用オファーを出す一方、Poolsideに対しては120億ドルの事前評価額で10億ドルを追加出資する。投資家向けの書簡では、この取引は「買収でもアキハイア(人材獲得目的の買収)でもない」と明記されており、Poolsideの3人の共同創業者は引き続き経営に残り、会社は独立した事業体として存続する見通しだ。ライセンスは非独占的であり、Poolsideは他のAIインフラ企業やクラウドプロバイダー、エンタープライズソフトウェア企業と同様の契約を結ぶことも可能とされる。

契約の背景

Poolsideはもともとコーディング支援AIエージェントの開発からスタートし、その後データセンター事業を手がけ、最終的に独自のオープンソースモデルLagunaをリリースした。LagunaはNvidia製サーバーチップ上で訓練され、「西側におけるDeepSeekやQwenへの対抗馬」と位置づけられていた。しかし投資家への書簡でPoolsideは、オープンソースモデル開発の競争を続けるには「Nvidiaハードウェアへのアクセスがより一層必要だった」と説明しており、最先端モデル開発から手を引き、インフラ企業としての立ち位置へとシフトする方針とみられる。Nvidiaが支払う60億ドルのライセンス料は、2027年末までにPoolsideの投資家へ分配される予定だ。

業界における意義

今回の契約は、Nvidiaがこれまでに結んできた同種のライセンス型契約としては3件目にあたるとされ、同社はこうした取引全体でおよそ270億ドルを投じてきたと報じられている。買収による直接的な統合ではなく、ライセンス供与と人材採用、少数株出資を組み合わせる手法は、独占禁止規制の懸念を避けつつ、対象企業の技術と人材へのアクセスを確保する狙いがあるとみられる。PoolsideのCEOであるEiso Kant氏によれば、モデル構築に携わったのは70人未満、エンジニアリングと研究業務全体でも115人以下という比較的小規模なチームだったといい、Nvidiaによる大規模な人材獲得の対象となった。

今後の見通し

Poolsideは独立企業として事業を継続するとされているが、最先端の自社モデル開発からは距離を置き、AIインフラ関連の役割へと軸足を移していく可能性が高い。NvidiaにとってはAIコーディング領域における技術基盤とエンジニアリング人材を確保する一手であり、同社が推し進めるAIソフトウェアスタック全体の強化につながるとみられる。今後、ライセンス料の実際の分配やPoolsideの事業方針の詳細、そして同様のライセンス型契約が他のAIスタートアップにも広がるかどうかが注目される。