概要

Anthropicは、Claude(Opus 4.8およびMythos Preview)がタンパク質結合分子の設計タスクにおいて、外部研究機関Adaptyv BioとTwist Bioscienceによる実験室検証で15の標的タンパク質のうち14個に対して機能する結合分子の設計に成功したと発表した。合計1,320個の設計を生成し、そのうち354個が実験的に結合能を確認された。マルチターゲットモード(48時間)でのヒット率は22.6〜26.7%、シングルターゲットモード(24時間)ではMythos Previewが35.1%を記録し、いずれも業界標準とされる10〜15%を大きく上回った。特にRBX1ターゲットではMythos Previewが40%のヒット率を達成し、過去の競技参加者の3.7%を大幅に上回った。一方で、AIによる自律的なバイオデザインが持つ潜在的な悪用リスクについても議論が生じている。

技術的な詳細

今回のキャンペーンでClaudeは、タンパク質設計に関する約30,000トークンの広範なプロンプト、インターネットアクセスとタンパク質設計論文コーパス、Google Drive・Slack・Gmail・BioRxivとの連携、専門のタンパク質設計・折り畳みモデルを実行するGPUといったリソースを与えられ、トークン予算やサブエージェント予算に制限のない状態で作業を行った。Claudeは各標的タンパク質上の設計位置の選定から、複数の構造設計・配列設計・共折り畳みモデルの調整、多サイクルのシリコ最適化、発現性・溶解性・結合能の計算スクリーニングまでを自律的に実行した。TNFαに対してはヒト・シノモルグス猿・マウスの各バージョンに結合する種間交差反応性の候補を複数設計するなど、応用性の高い成果も見られた。一方でBBF-14やマルトース結合タンパク質(MBP)では成果が限定的で、MBPについては90個の設計のうち確認された結合は得られなかった。またAnthropicは同時に、Claude Opus 5がNMRおよびLC-MS分析データを23分・19分という短時間で処理し、実験室結果と0.08¹H以内で一致する精度を示したことも報告している。

安全性への懸念と今後の展望

今回の実験結果は、AIエージェントが既存の生物学的設計ツールを組み合わせて機能するパイプラインを自律的に構築できることを示すものであり、Anthropic自身も「エージェント的な生物学的発見はデュアルユースである」と位置付けている。実際、タンパク質設計を含む一部のデュアルユース生物研究機能は、一般アクセス可能なClaude Fable 5では利用できない措置が取られている。記事では、この実験自体が具体的な生物学的脅威を示すものではないとしつつも、自律性の高まりに伴うリスクへの警戒感も示されている。元医薬品経営幹部のMartin Shkreli氏は、今回のバインダーが細胞外特性に限定される点を指摘し「印象的な仕事ではない」と成果を批判的に評価した。また、設計されたタンパク質結合分子はあくまで治療開発の初期段階の成果物であり、安定性・安全性・薬物動態の最適化を経なければ医薬品候補とはならない点も強調されている。Anthropicは今後、信頼できるアクセスプログラムを通じて科学者向けにこれらの機能を提供する予定であり、Claudeがすべての創薬モダリティにわたって開発プロセス全体をエンドツーエンドで実行できるよう拡張していく方針を示している。