概要

Anthropicが今秋に予定するIPO(新規株式公開)で、評価額2兆ドル規模を目指していると複数の米メディアが報じた。Bloombergの報道によれば、同社はSpaceXが記録した過去最大級の新規株式公開規模(調達額750億ドル、オーバーアロットメント込みで862億ドル)に匹敵、あるいはそれを上回る規模を目指しているという。早ければ8月末にも上場申請を行い、9月から10月にかけて上場する見通しとされる。主幹事にはモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースが名を連ねる。

Anthropicの評価額は、5月の資金調達ラウンド時点で9650億ドルだったとされ、今回のIPOで目指す2兆ドルはその2倍以上に相当する。創業者でCEOのダリオ・アモデイ氏の持ち株比率は約2%とされ、経営陣は創業者による支配権を維持するため種類株(スーパー議決権株)の導入も検討しているという。

急成長する財務状況

評価額目標の背景には、Anthropicの急速な売上拡大がある。2026年第2四半期の売上高は速報値で115億ドルに達し、前年同期の7億8700万ドルから約14.6倍という驚異的な伸びを記録した。年換算の売上高(ARR)も、5月時点の470億ドルから7月末には650億ドルへと急拡大している。一方で2025年通期の純損失は約420億ドルに上ったとされるが、2026年第2四半期には調整後営業利益が黒字化したと報じられている。

同社はAmazonやAMDと戦略的パートナーシップを結んでいるほか、AI企業Decartの買収交渉を進めているとも伝えられる。また、大規模なコンピューティング調達契約の一環として、SpaceXとの間で数十億ドル規模の取引が浮上しているとの報道もある。

SpaceXとの比較、そして評価額への懐疑論

比較対象となるSpaceXは2026年6月にIPOを実施し、評価額は約1.75兆〜1.77兆ドルでスタート。その後一時2兆ドルを超えたものの、直近では1.9兆ドル前後まで下落している。Anthropicが目指す2兆ドルという水準は、このSpaceXの軌跡と重なる規模感であり、同社の成長率の高さがこの目標を後押ししているとみられる。また、競合のOpenAIは3月に1220億ドルを調達し評価額8520億ドルとなっているが、Anthropicが先に上場を果たせば、生成AIブームを牽引する主要プレーヤーとして株式市場から直接投資を呼び込む初のケースとなる。

一方で、こうした高額評価に懐疑的な見方もある。アナリストのDavid Jagielski氏は「成長のこれほど早い段階で2兆ドル(あるいはそれ以上)という時価総額が正当化できるとは思わない」と指摘し、完全な財務情報が開示されていない状況では投資家が収益性の見通しを十分に判断できないと警鐘を鳴らす。SpaceXが巨額の損失を抱えながらも高評価額で上場を果たした前例はあるものの、市場の熱狂が伝統的な財務指標を凌駕するリスクも指摘されている。S&P500が最高値圏で推移するなど市場環境自体は上場に追い風となっているが、上場後の株価変動リスクには注意が必要だとされる。