概要

セキュリティ企業Cycodeの研究者Yuval Elbar氏は、NASA/JPLが開発するオープンソースの地上管制フレームワーク「AMMOS Instrument Toolkit(AIT)」のブラウザ操作コンソール「AIT-GUI」に、未認証の攻撃者が探査機や観測機器へ任意のコマンドを送信できる重大な脆弱性チェーンを発見したと公表した。AIT-GUIは探査機や科学機器へのコマンド送信とテレメトリ処理を担う、地上データシステム向けの操作コンソールである。脆弱性はGitHub Security Advisory「GHSA-p9r8-2q67-fp86」として追跡され、CVSSスコアは9.4(Critical)。関連するCVE-2026-60112(CVSSv4で9.3)も割り当てられている。影響を受けるのはバージョン2.5.1以前で、2026年8月12日にリリースされたバージョン2.5.2で修正済みである。

技術的な詳細

今回の脆弱性は、単体では致命的とまでは言えない複数のWebアプリケーションの弱点が組み合わさることで、探査機へのコマンド送信という極めて重大な結果をもたらす点が特徴だ。Elbar氏は「メモリ破壊のプリミティブも、認証バイパスも、新規のエクスプロイト技術も必要ない。非常に価値の高い標的に対して、よく知られた4つのWebの弱点を組み合わせただけだ」と述べている。具体的な弱点は以下の4つである。

1つ目は認証・認可の欠如で、コマンド送信用の/cmdをはじめとする状態変更系エンドポイントに、ログイン要求やセッション検証、CSRF対策が存在しなかった(CWE-306)。2つ目はネットワーク露出の問題で、ホスト設定を変更可能であるにもかかわらず、サーバーは既定ポート8080ですべてのネットワークインターフェース(0.0.0.0)にバインドするようハードコードされていた。3つ目はクロスオリジン攻撃で、フォーム送信がプリフライトチェックなしにクロスオリジンリクエストを受け付けてしまうため、悪意あるWebページを閲覧しただけで操作者のブラウザ経由でコマンドが送信されうる(CWE-352)。4つ目はパストラバーサルで、スクリプトやコマンドシーケンスを実行する/seqおよび/script/runエンドポイントがユーザー指定のファイルパスを十分に検証しておらず、意図したディレクトリ外のファイルを実行できてしまう(CWE-22)。Cycodeはこの深刻さについて「未認証POSTがもたらす被害範囲は、Webページの改ざんではなく、発行される観測機器コマンドの数で測られる」と表現している。

対応と今後の対策

NASA/JPLは2026年7月10日に修正をコミットし、7月29日にCVE-2026-60112が公開、8月12日にバージョン2.5.2がリリースされた後、8月13日にGHSA-p9r8-2q67-fp86のアドバイザリが公開されるという流れで対応が進んだ。修正版ではオリジン検証が追加されているが、コマンドエンドポイント自体への認証実装は今回の修正には含まれていない点が指摘されている。Cycodeは、ファイアウォールで保護されたホストローカルな環境であっても、操作者がブラウザで悪意あるサイトを閲覧するだけで攻撃が成立しうるとして、コンソールを利用する組織に対し、バージョン2.5.2以降への更新に加え、信頼できないネットワークからのコンソールポートへのアクセス制限、コマンドおよびシーケンス履歴の露出有無の確認、状態変更エンドポイントへの認証・認可の実装、CSRF対策とパス検証の適切な実施、サーバーを設定済みホストにのみバインドすることを推奨している。