概要

中国の民間宇宙企業LandSpace(藍箭航天)は8月19日、朱雀三号(Zhuque-3)ロケットの2回目の軌道打ち上げを実施し、切り離した第1段ブースターを着陸脚で地上に垂直着陸させることに成功した。中国の東風商用宇宙イノベーションパイロットゾーンから現地時間午前7時35分に打ち上げられ、上段は衛星を軌道へ投入、切り離された第1段は甘粛省民勤県に設けられたLandSpaceの着陸サイト第1号へ、打ち上げから約6分後に帰還した。同社によれば、これは中国の民間企業として初めて軌道級ブースターを脚部着陸によって回収した事例であり、再使用ロケット技術で先行するSpaceXやBlue Originに続く成果として注目されている。

打ち上げから着陸までの流れ

ロケットは打ち上げ後137秒で段分離を実施し、上段は衛星を軌道に投入する任務を継続した。切り離された第1段は高度での姿勢制御、逆噴射による減速、大気圏再突入時の空力滑空を経て、着陸直前に着陸燃焼を行い、午前7時41分頃に着陸サイトへ垂直着陸した。LandSpaceは、この一連の飛行で大気圏再突入、制御下降、最終着陸燃焼という再使用ロケットにとって最も技術的難度の高い工程を検証できたとしている。なお着陸後、機体後部で火災が発生したとの報道もあり、機体の損傷状況など詳細は明らかになっていない。

機体の技術仕様

朱雀三号は全長76.6メートルとSpaceXのFalcon 9(約70メートル)を上回る規模を持つロケットで、機体外壁にはステンレス鋼を採用している。推進剤には液体酸素とメタンの組み合わせを用いており、第1段には同社独自開発のTianzhi(天鵲)系エンジンを9基搭載する。LandSpaceは2015年設立の北京拠点企業で、液酸メタンエンジンの開発に早くから注力してきた実績を持ち、2023年7月にはSpaceXやRelativity Spaceに先駆けてメタン燃料ロケットの軌道到達を成功させている。今回の朱雀三号は2024年1月の垂直離着陸試験、2025年12月の初号機打ち上げを経て、2回目の飛行でブースター回収という重要な節目を達成した形だ。

今後の展望

再使用ロケットの経済的な優位性を実証するには、単発の着陸成功にとどまらず、機体を繰り返し飛行させて再利用の信頼性とコスト削減効果を示す必要がある。SpaceXはこれまでに600機を超えるブースターの再使用実績を積み上げており、LandSpaceが同水準の運用実績を確立するまでには時間を要するとみられる。一方で中国国内では、国有企業CASC(中国航天科技集団)も7月に長征10B型ロケットでブースター回収に成功しており、民間・国有双方で再使用ロケット開発競争が加速している。今回の成功は、中国の商業宇宙産業がSpaceXとの技術格差を着実に縮めつつあることを示す象徴的な出来事といえる。