概要

不動産サービス大手Cushman & Wakefieldの調査によると、アジア太平洋地域のデータセンター開発パイプラインは2026年上半期に過去最高の26.5GWに達した。この半年間だけで7.1GWが積み増され、内訳は建設中が4.8GW、計画段階が21.7GWとなっている。1.4GWの新規稼働容量が市場に投入されたにもかかわらず、コロケーションの空室率は10.9%から10.3%へと低下しており、AI需要による旺盛な吸収ペースが供給の伸びを上回っている状況がうかがえる。

AI需要による事前リースの拡大

同調査が特に注目するのは、施設が稼働する前の段階で容量の事前リース契約(プレリース)が拡大している点だ。Cushman & Wakefieldでリサーチ責任者を務めるPritesh Swamy氏は「新規供給は急速に吸収されており、稼働開始時点で新しいストックの多くはすでに契約済みとなっている」と述べている。電力確保の制約や建設期間の長期化、AIワークロード特有の技術要件が、顧客に完成前からの容量確保を促す要因となっている。

地域別の動向

拡大を牽引しているのは東南アジアで、建設中容量の約半分を占める。マレーシアは建設中容量が1.04GWに達し、ジョホールでは602MWへと91%増加した。タイは建設中が859MWで、バンコクのパイプラインは2.08GWへとほぼ倍増している。インドネシアも1.70GWのパイプラインを抱え、力強い成長を見せる。オーストラリアのシドニーは65%増の2.13GW、インドのムンバイも31%増の1.73GWへとパイプラインを拡大した。

一方、既存の主要市場では供給制約が顕在化している。ソウル首都圏の空室率は1.1%という極めて逼迫した水準にあり、容量が10%増加したにもかかわらずパイプラインは横ばいだ。日本はインドを追い越し、稼働容量1.8GWでアジア太平洋第2位の市場となった。東京とシンガポールの空室率もそれぞれ4.4%、4.8%と引き続きタイトな状態が続く。

主要プロジェクトとしては、CoreWeaveがジャカルタで2028年稼働予定の360MW施設を、CDC Data Centresがオーストラリアの複数キャンパスで米国企業と2028〜2029年にかけて555MWの契約を締結したことが挙げられる。また韓国ではDigital Edgeがデュアル給電のAI対応施設60MWを、タイのコラートではGorilla Technologyが完全稼働時に7万6000基のGPUを収容する200MWのキャンパスを開発している。

電力制約と今後の見通し

同地域は「電力制約下での実行」という段階に入りつつある。計画容量の約82%が電力接続、土地、許認可、機器調達といった要因に左右される状況にあり、開発の重心は既存の飽和したハブから、大規模な電力供給が可能な周辺地区へとシフトしつつある。従来はネットワーク接続の良さが立地選定の主要因だったが、今後は電力と土地の制約がより重視される見込みだ。

同調査は、オーストラリア、インド、日本、マレーシアが2028年までにそれぞれ稼働容量2GWを超えると予測している。需給の逼迫は賃料上昇を後押しし、周辺市場の開発を促す一方、地域差も大きいとみられる。AI需要の爆発的な拡大と電力インフラの供給制約とのせめぎ合いは、当面この地域のデータセンター市場を規定する構図となりそうだ。