概要

テキサス州のグレッグ・アボット知事は8月3日、送電網運営者ERCOT(Electric Reliability Council of Texas)と州公益事業委員会(PUCT)に対し、電力網への接続を申請しているデータセンタープロジェクトを対象とした包括的な監査の実施を指示した。対象は250〜300件、主にデータセンター案件で、その将来的な電力需要の合計は200ギガワットに達する。これは前月に記録されたERCOTのピーク需要の2倍以上に相当する規模であり、AIブームに伴う電力インフラへの圧力がテキサス州で政治問題化していることを示している。ERCOTの接続申請キューには合計1,800件以上(うち9割がデータセンター)が並んでおり、その潜在需要は474ギガワット超と、州のピーク需要の5倍規模に膨れ上がっている。

監査の内容と対象

監査では、開発事業者に対し以下の情報開示が求められる。

  • 受給している税制優遇措置の内容
  • 電力消費計画および自家発電計画
  • 水使用量と冷却設備の運用状況
  • 地域社会への影響を軽減するための取り組み
  • 施設の所有関係

アボット知事は「(データセンター事業者は)テキサスの一般家庭にコストを転嫁したり、生活の質に悪影響を及ぼしたりしてはならない」と述べており、急増するデータセンター需要が既存の電力利用者に負担を強いることのないよう、透明性を確保する狙いがあるとみられる。監査の完了には数か月を要する見込みで、ERCOTは通常の接続検討プロセスに先立ち、この監査を最優先事項として扱うとしている。最初のバッチ調査は2027年4月までの完了を目指すという。

政治的背景と業界の反応

背景には、データセンター開発の急拡大に対する州内の反発の高まりがある。一方で、少なくとも43社のデータセンター関連企業がアボット知事のこの方針を公に支持しており、業界側も一定の理解を示している格好だ。また、ERCOTが計画する765キロボルトの新設送電線についても、土地所有者からの強い反対に直面しており、州議会議員やダン・パトリック副知事は、議会による審査が済むまで許可を出さないよう求めている。データセンターの電力需要問題は、送電インフラ整備を巡る政治的対立とも絡み合いながら、テキサス州の重要な政策課題となりつつある。

今後の見通し

今回の監査は、AI関連投資の急拡大によって電力網への接続要請が実需をはるかに上回る規模で殺到している現状に対し、州が実態把握とコントロールを試みる動きと位置づけられる。監査結果は今後の接続許可の可否やインフラ投資の優先順位付けに影響を与える可能性が高く、テキサス州に限らず、AI向けデータセンターの電力需要が急増する他州・他地域における規制のあり方にも波及する可能性がある。