概要

NAND型フラッシュメモリ大手のKioxia Holdingsは、Bain Capitalが設立した特別目的会社(SPC)「BCPE Pangea Cayman2」が7月31日時点で14.19%の株式を保有し、筆頭株主である東芝(同時点で14.12%、従来の14.48%から低下)を上回ったことを明らかにした。名目上はBain Capitalが設立した器だが、実態はSK hynixのための投資ビークルであり、SK hynixは同SPCが保有する転換社債を通じてその議決権の「実質ほぼすべて」を握れる立場にある。つまり書類上の筆頭株主交代は、韓国の競合メモリメーカーであるSK hynixがKioxiaに対して最大の潜在的影響力を持つに至ったことを意味する。

出資構造の背景

この構図の背景は2018年に遡る。当時、東芝メモリ(現Kioxia)を切り離す大型売却に際し、Bain Capital主導のコンソーシアムが買収を実施し、SK hynixもこれに参加して約3.9兆ウォンを投じた。出資はSPC1(株式投資)とSPC2(転換社債)の2つの特別目的会社を通じて行われ、このうちSPC1は2026年6月に売却を完了済みだが、SPC2は保有が続いている。このSPC2が転換社債を普通株に転換すれば、SK hynixはKioxiaの名実ともに筆頭株主となる可能性がある。

経営権への制約

もっとも、SK hynixが直ちに経営支配権を握れるわけではない。2018年の買収時に締結された投資契約では、SK hynixは2028年まで議決権比率を15%以下に抑えることが定められており、Kioxia側が同意しない限りこの上限を超えられない。加えて、経済安全保障を理由に外資による戦略産業への投資審査を厳格化している日本政府の承認や、複数国の独占禁止法当局による審査など、転換社債の行使には制度上の高いハードルが控えている。NAND市場ではサムスン電子が約29%、SK hynixが約18%で首位・2位を占め、Kioxiaは約14%で3位につけており、競合同士という立場も議決権行使を慎重にさせる要因とみられる。業界関係者の間では、SK hynixが実際に経営支配に動くというよりも、この持ち分を「戦略的レバレッジ」として活用するとの見方が優勢だ。

今後の見通し

Kioxiaの株価はこのところ大きく下落しており、6月時点で11万円台だったものが現在は5万円前後までほぼ半減している。背景には特許訴訟での敗訴やNAND市場の減速懸念があるとされる。SK Group会長も経営権の直接掌握よりも戦略的な影響力の行使に関心を示しているとされ、当面はSK hynixが正式な株主として表舞台に立つことはなく、東芝を含む既存株主との力学の中で、転換社債の扱いや2028年の制限解除後の動向が焦点になりそうだ。