概要
中国杭州拠点のヒューマノイドロボット企業Unitree Roboticsが、上海証券取引所のSTAR市場(科創板)への上場を控えている。8月10日に始まった個人投資家向けの株式申込みは、上海STAR市場の記録となる8000倍超の応募超過を記録し、再配分調整後の当選確率はわずか約0.018%にとどまった。公募価格は1株150.8元(約22.4ドル)に設定され、発行済み株式の約10%にあたる約4045万株を売り出すことで、約61億元(約9億ドル)の調達を目指した。この結果、時価総額は600億元(約90億ドル)を超える水準となった。取引開始前の非公開市場では、EquityZenやHiiveなどのプラットフォームでIPO価格の約3倍、Hyperliquidのデリバティブ市場では約4倍の水準まで買われており、初日に株価が8倍に跳ね上がるとの予測も一部トレーダーの間で出ていた。中国メディアの報道によれば、IPO申込者に対して公募価格の170%高となる410元での転売を持ちかける「スキャルパー」の存在も伝えられており、投資家の過熱ぶりを裏付けている。
企業の実績と背景
2016年設立のUnitreeは、ヒューマノイドロボットと四足歩行ロボットの両方を手掛け、走行・ダンス・格闘動作や転倒からの復帰といったデモンストレーションで知名度を高めてきた。売上高は2024年の3億9277万元から2025年には17億元へと4倍以上に急成長し、2025年の純利益は2億7821万元に達した。海外売上比率は43.65%を占め、2025年には5000台超のヒューマノイドロボットを出荷した実績を持つ。すでに黒字化を達成している点は、多くのヒューマノイドロボット競合他社と一線を画す強みとされる。上場審査は異例の速さとなる73日間で完了し、中国本土初の汎用ロボティクス企業の上場という位置づけも投資家の関心を集めた一因となった。株主にはTencent、Alibaba、そして戦略的投資家として参加したDeepSeekといった大手テック企業が名を連ねており、中国政府がロボティクス産業を国家的に後押ししている姿勢も評価を押し上げたとみられる。一方で、2026年第1四半期の調整後利益は研究開発費とマーケティング費用の増加により前年比52%超の減少となっており、成長投資の負担も浮き彫りになっている。
市場環境と今後の課題
Unitreeへの旺盛な需要は、数週間前に上海市場に上場した半導体メーカーCXMTの株価が初日に500%超急騰した流れも背景にあり、中国の新規株式公開市場全体でハイテク銘柄への投資熱が高まっていることを示している。同様にヒューマノイドロボット分野では、競合のAgiBotやLeju Roboticsもそれぞれ香港市場や深セン市場での上場を目指しており、Unitreeの成功は業界全体の資金調達環境に影響を与える可能性がある。もっとも、Unitree自身が目論見書で認めているように、ロボットハンドの精度や耐久性が持続的な作業に耐えうる水準にはまだ達しておらず、商用化が想定より緩やかなペースで進む可能性も指摘されている。また、ロボット輸入をめぐる米中間の地政学的緊張から、将来的な貿易規制の対象となるリスクも同社は抱えている。投資家の熱狂と実際の事業基盤・技術的課題との間にどう折り合いがつくかが、今後のUnitreeおよびヒューマノイドロボット業界全体の焦点となりそうだ。