概要
サムスン電子の次世代HBM4メモリーの歩留まりが、業界で「黄金水準(golden yield)」とされる80%に到達したと報じられた。2月の量産開始時点では60%未満だった歩留まりを、わずか半年ほどでここまで引き上げたことになる。当初は2026年末までに80%達成を目標としていたが、プロセス改善が予想を上回るペースで進んだことで、数カ月前倒しでの達成となった。NVIDIAの次世代AIアクセラレータ「Vera Rubin」向けの供給競争が激化するなか、これまでHBM市場で先行してきたSKハイニックスに対する競争力を大きく高める材料として注目されている。
技術的な詳細
歩留まり改善を支えたのは、TC-NCF(熱圧縮非導電膜)プロセスの進展と、HBM4の基盤となる1c DRAMの歩留まりが年初の時点ですでに80%を超えていたことの2点とされる。一方のSKハイニックスもHBM4の歩留まりを「80%程度」まで引き上げているとみられ、MR-MUF(先進型モールドアンダーフィル)技術を用いて下半期に順調な量産拡大を見込んでいるという。両社とも同水準の歩留まりに達しつつあることで、HBM4世代における技術的な差は縮まりつつある。
ビジネスへの影響
サムスンは2026年下半期のHBM4売上を前四半期から3倍以上に拡大させる計画で、2026年下半期にはHBM販売全体の60%以上をHBM4が占める見通しだ。年末までにはHBM市場でのシェアを約38%まで高めることを目標としており、これは同社のDRAM全体の市場シェアと同水準になる。歩留まり改善はNVIDIAの次世代GPU「Vera Rubin」の生産加速を後押しする可能性があり、複数サプライヤーからの調達を望む顧客にとっても有利に働くとみられる。
背景と今後の見通し
SKハイニックス社内では、歩留まり競争と並行して労使交渉も動いている。経営陣と労働組合は、給与上限の撤廃と年間営業利益の10%を配分する利益配分スキームでは合意したものの、「利益配分の半分以上を財務諸表株で支払い、売却にロック期間を設ける」とする経営側の提案について労働側が反発しており、交渉は複雑化している。市場調査会社TrendForceは、供給制約が続くなかでHBM4の価格決定力は2027年まで維持されると予測する一方、2027年のHBM出荷量は前年比50~60%増加する見通しであっても需要増には追いつかず、市場の逼迫状態はしばらく続くとみている。なお業界の構造変化を示す動きとして、Appleがサプライチェーン多様化のため中国CXMTのメモリー採用を検討しているとの報道もある。