概要
欧州最大級の格安航空会社ライアンエアーは、Google Cloudと5年間のデータ・AIパートナーシップ契約を締結したと発表した。契約金額は両社とも非公開としている。ライアンエアーはこれに先立つ7月27日にもAWSとの契約を5年間更新しており、今回のGoogle Cloud契約と合わせることで、複数のクラウドプロバイダーを併用する「デュアルクラウド」体制を構築する。ライアンエアーのCEOであるエディ・ウィルソン氏は「優れたインフラの回復力を確保する必要があり、新たなデュアルクラウド戦略はそれを実現するものだ」と述べている。
役割分担とAIサービスの活用
新体制では、AWSとGoogle Cloudがそれぞれ異なる役割を担う。AWSは引き続き公式サイトの運用や647機の保有機材にまたがる運航計画を支え、Amazon Quick、Amazon Bedrock、Bedrock AgentCoreといったサービスが利用される。一方、Google Cloud側では従業員3万5000人を対象にGoogle Workspaceを全社導入するほか、エージェント型AIプラットフォームのGemini Enterpriseを意思決定の自動化や乗務員のスケジューリング最適化、従業員の生産性向上に活用する。さらにGoogle DeepMindのアルゴリズム改善技術「AlphaEvolve」や、気象予測・保守計画に用いる「WeatherNext」も導入される予定だ。
デュアルクラウド化の狙いと今後の展望
今回の体制構築の主眼は、片方のクラウドで障害が発生した際にもう一方へ自動的に切り替えることで、フライト運航や顧客対応を止めずに継続できるインフラの回復力を高めることにある。航空会社にとって予約システムや運航計画の停止は直接的な事業損失につながるため、単一プロバイダーへの依存を避ける動きは業界的にも合理性が高い。Google Cloudのバイスプレジデントであるマウリーン・コステロ氏は、今回のパートナーシップについて「業界のリーダー企業が安全に規模を拡大し、運用コストを削減する助けとなる」と語った。ライアンエアーは2034年までに年間旅客数3億人を目指しており、今回のインフラ強化はその成長戦略を支える基盤整備の一環と位置づけられる。