概要

Linus Torvaldsは8月16日、Linuxカーネル7.2を正式にリリースした。今回のリリースはUbuntu 26.10をはじめとする今後のディストリビューションに採用される見込みで、AMD EPYCおよびIntel Xeon系サーバーを中心にI/O性能の向上が図られているのが特徴だ。BPFシステムコールでの共通属性対応、CPUスケジューラのキャッシュ認識型負荷分散、Btrfsのラージフォリオ対応、Landlockセキュリティモジュールの強化なども盛り込まれている。Torvaldsは今回のサイクルについて「小さな修正がドライバを中心に至るところにあり、最終週もネットワーキング周りの活動が活発だった」と述べており、例年より変更規模が大きくなったことを認めている。

主な新機能とパフォーマンス改善

目玉機能の一つがAMD EPYC 5およびIntel Xeon 6世代プロセッサ向けの「キャッシュ認識型スケジューリング(Cache Aware Scheduling)」で、CPUキャッシュの局所性を意識したタスク配置によりマルチソケット・多コア環境での処理効率を高める。ハードウェア対応では、Intelが開発したUSB4STREAMプロトコルや、AMDGPUにおけるHDMI 2.1 FRL(Fixed Rate Link)サポートが追加されたほか、Intel Arc B390グラフィックスの機能拡張、ThreadRipper環境でのpoll性能向上など、AMD・Intel双方のプラットフォームで細かな改善が積み重ねられている。またApple M3デバイスのサポートや、ゲーミングコントローラ「Zenaim Leverless」への対応など、コンシューマ向けハードウェアの取り込みも進んだ。一方でAppleTalkサポートや、ARCNetネットワーク向けの古いISA・PCMCIAアダプタドライバなど、レガシーコードの削除も行われている。

開発終盤ではDRMスケジューラを巡るトラブルも発生した。新しい「fair」ポリシーが性能低下を引き起こしたため、従来のFIFOスケジューラへの回帰(revert)が土壇場で行われたほか、サウンドデバイスのクイーク追加やtlbi=ipiブートオプションの実装といった修正も最終週に滑り込んだ。Torvaldsはこの対応について「『あのコードはまだ準備ができておらず問題を起こした』という事態に対処する正しいやり方だ」と説明している。

開発体制の変化と今後の展望

Torvaldsは今回のリリース規模が例年より大きくなった背景として、AIコーディングツールの活用拡大による開発者からの貢献量増加を挙げ、これを開発における「新しい常態(new normal)」と表現した。その上で「その理由でリリースを遅らせていたら、おそらく永遠にリリースできなくなるだろう」と述べ、増加する変更量を受け入れつつ従来通りのペースでリリースを続ける方針を示した。品質維持とAI支援による貢献増加のペースのバランストレードオフが、今後のカーネル開発における課題として浮かび上がっている。

Linux 7.2のリリースと同時に次期バージョン7.3のマージウィンドウが開き、すでに40件のプルリクエストが提出されているという。AMD・Intel・Nvidiaの次世代チップへの対応準備も進められており、次サイクルでもハードウェア関連の変更が続く見通しだ。