概要
中国のAI企業DeepSeekは、フラグシップモデルであるV4-FlashおよびV4-ProのAPI価格を8月16日から大幅に引き上げると発表した。値上げ幅は項目によって異なるが、最も上昇率の大きいキャッシュヒット時の入力トークン価格では1,100%を超える引き上げとなるケースもある。同社は今回の改定にあわせて、需要の高いピーク時間帯と、その約半額となるオフピーク時間帯を分ける動的価格体系を新たに導入した。
価格改定の詳細
V4-Flashモデルは、ピーク時の価格が100万トークンあたり0.28ドルから1.32ドルへと4倍以上に引き上げられる。より細かく見ると、キャッシュミス時の入力トークンは0.14ドルから0.22~0.44ドル(57~214%上昇)、出力トークンは0.28ドルから0.66~1.32ドル(136~371%上昇)となる。V4-Proモデルも同様の傾向で、ピーク時の価格は0.87ドルから3.96ドルへ引き上げられ、入力トークンは0.435ドルから0.66~1.32ドル(51~203%上昇)、出力トークンは0.87ドルから1.98~3.96ドル(127~355%上昇)となる。オフピーク時間帯はこれらの価格の半額に設定されており、1日24時間のうち17時間がオフピーク料金の対象となる。新価格は8月16日から大部分の地域で適用が始まる。
背景
DeepSeekは今回の価格改定について、「リソースをより合理的に配分するため」と説明しており、開発者や企業に対して混雑していない時間帯への処理シフトを促す狙いがあるとみられる。Info-Tech Research GroupのMark Tauschek氏は、今回の値上げについて「需要が増えれば価格が上がるという単純な需給関係」だと指摘し、AI需要の急増による供給能力の逼迫が主因だとの見方を示した。また、Greyhound ResearchのSanchit Vir Gogia氏は、DeepSeekの低価格戦略を支えてきた約98%という高いキャッシュヒット率が同社のコスト優位性の重要な要素だったと指摘し、新しい価格体系はこの仕組み自体に変化をもたらすことになると述べている。
業界への影響
大幅な値上げにもかかわらず、DeepSeekの価格水準は依然として競合の主要AIサービスと比べて低い水準にとどまっている。DeepSeekのこれまでの積極的な低価格戦略は、AI業界においていわゆる"デスゾーン"と呼ばれる価格競争環境を生み出し、OpenAIやAnthropicなど大手AI企業のIPO計画にとってもリスク要因の一つとして意識されてきた。今回の値上げが、需要逼迫に対する一時的な調整にとどまるのか、それとも業界全体の価格構造に影響を及ぼす転換点となるのかが今後注目される。