概要
Zed Industriesは8月12日、開発者とAIエージェントが同じ場所でコードを書き、レビューできるマルチプレイヤー開発環境「Delta」を発表した。創業者のNathan Sobo氏は「Delta keeps code and conversations connected」と述べ、コード変更がどのような経緯で生まれたのかという文脈を失わないことを設計の核に据えたと説明している。従来のコミットベースの開発フローでは、AIエージェントとのやり取りの過程がコミット履歴から切り離されがちだったが、Deltaはコードの進化に伴う会話の全履歴を保持し、コメントを特定のコード行に紐付けたまま自動的に追従させる。現時点ではプライベートベータの段階で、初期ユーザーへの招待が始まっており、今後数週間かけて対象を広げていく予定だ。
技術的な詳細
Deltaの中核を支えるのが、新設計のデータベース「DeltaDB」だ。DeltaDBはCRDT(Conflict-free Replicated Data Type)をベースとしており、複数の参加者が同時にコードや会話を編集しても自動的に内容を調和させる。「DeltaDBは会話とワークツリーを一体として、リアルタイムに複製する」設計になっており、既存のGitリポジトリとも互換性を保ちながら、コミットとコミットの間に発生したすべての編集と会話のやり取りを記録できる点が特徴だ。
利用方法も複数用意されている。macOS・Linux向けのデスクトップアプリでローカル実行できる(Windows対応は近日公開予定)ほか、RustアプリケーションをWebAssemblyとWebGLでビルドしたブラウザ版により、インストールなしでほぼ同等の体験を提供する。さらにターミナル経由でClaude Codeなど外部のAIエージェントとも連携できる設計になっており、単一のエディタに閉じない柔軟な使い方を想定している。インターフェース面では、AIエージェントとの会話を単に受動的に眺めるログとしてではなく、人間が直接編集できるドキュメントとして扱う点も特徴で、スレッド内の任意の位置にカーソルを置いてコメントを付けられるため、エージェント側もユーザーの意図をより正確に把握できるという。
チーム利用も考慮されており、スレッドに他のメンバーを招待すると、全員がリアルタイムで同期されたワークツリーにアクセスできる。処理をクラウドランナーに移行することも可能で、エージェントがバックグラウンドで作業を続けている間に、開発者は別のタスクへ移れる仕組みになっている。
今後の展開
Zedは、DeltaDBを将来的には既存のZedエディタ本体にも統合する方針を示しているが、現時点では新環境Deltaの開発が優先事項だという。既存のZedユーザーへの影響を最小限に抑えつつ、Deltaで新しいプリミティブを段階的に検証・改善していく考えを示している。AIエージェントとの協働を前提としたコーディング環境が各社から相次いで登場する中、Zedは「コードと会話の文脈を切り離さない」という切り口で独自のポジションを打ち出した形だ。