概要

AWSはAIエージェント基盤「Amazon Bedrock AgentCore」に、新たな2つの機能を追加した。1つはセッション内でのエージェントの過去のアクション履歴を踏まえて各リクエストを評価する、ステートフルな認可制御「temporal policies」と、モデルやツールへのトラフィックを制限する「rate limiting」機能。もう1つは、ユーザー自身のAmazon EC2インスタンス上でインフラ管理なしにエージェントを実行できる「runtime instances」機能の一般提供(GA)開始である。両機能はいずれもAIエージェントを本番環境で安全かつ柔軟に運用するための基盤強化と位置づけられる。

temporal policiesによる文脈認識型の認可制御

temporal policiesの背景にある問題意識は、「単一のツール呼び出しはそれ単体では安全でも、それ以前に何が起きていたかによっては有害になり得る」という点にある。従来の認可制御は個々のリクエストを独立に評価することが多いが、AIエージェントは複数ステップにわたって自律的に行動するため、直前までの操作履歴を無視した判断では不十分になるケースが出てきていた。

temporal policiesは、こうした課題に対応するため、セッション内での過去のアクションをコンテキストとして各リクエストを評価する。具体的な用途としては、ワークフローの実行順序を強制すること、ツールの引数が先行するコール出力と完全に一致することを要求すること、特権的なアクションを実行する前に人間による承認を必須とすること、扱うデータの鮮度を維持することなどが挙げられている。

あわせて提供されるレート制限機能は、ツール・モデル・ゲートウェイに接続されたエージェントへのトラフィック量を、ユーザー単位またはグループ単位で制御するものだ。OAuthやAWS IAMによるスコープ設定に対応し、全ターゲットタイプへのリクエスト数、推論ターゲットへのトークン数、長時間セッションの上限などを細かく設定できる。これにより、ダウンストリームサービスの可用性確保と、利用者間での公平なリソース配分の両立を図る狙いがある。

runtime instancesの一般提供開始

同時に発表されたのが、ユーザー自身のEC2インスタンス上でエージェントを管理なしに実行できる「runtime instances」機能の一般提供(GA)開始である。既存のサーバーレス型ランタイムが最大8時間程度の短時間セッション向けであったのに対し、runtime instancesは最大14日間に及ぶ長時間セッションに対応する。GPU加速、メモリ最適化、計算最適化など、EC2インスタンスファミリーの全範囲から選択可能で、既存のマイクロVM型ランタイムと組み合わせて使うこともできる。プロビジョニングやパッチ適用、スケーリング、ライフサイクル管理といった運用面はAWSが担うため、利用者はインフラ管理の負担を負わずに済む。提供リージョンは米国東部2地域、米国西部、アジア太平洋4地域、欧州2地域の計9地域で、料金はコンピュートのプロビジョニング管理費に加えて通常のEC2利用料が発生する形となる。

今後の展望

長時間稼働・高負荷な処理を要するAIエージェントのニーズが高まる中、AWSは今回の機能追加により、セキュリティ・ガバナンス面(temporal policies、レート制限)とインフラの柔軟性(runtime instances)の両面からAgentCoreの実運用対応力を強化した形だ。特にtemporal policiesは、単発のリクエスト単位ではなくセッション全体の文脈を踏まえた認可制御という、エージェント特有のリスクに対応する仕組みとして、他クラウドベンダーの同種サービスにも今後波及する可能性がある。