概要
Googleの主任研究者であるJeff Dean氏が、27年間在籍した同社を離れ、AIを活用して科学研究を加速させる新会社「Discovery Loop」を設立した。Dean氏は1999年にGoogleへ入社した同社30番目の従業員であり、検索インフラからTensorFlow、Geminiに至るまで数々の技術基盤を築いてきた「最もGoogleらしい人物」とも評される人物だ。今回、Google上席フェローのSanjay Ghemawat氏、Google Brainの共同創業者Quoc Le氏、Google DeepMind研究VPのOriol Vinyals氏ら、長年Dean氏と協業してきた著名なAI研究者たちも同社を後にし、Discovery Loopに参画する。Dean氏は同社の最高経営責任者を務める予定で、公益企業(Public Benefit Corporation)として設立された。
Discovery Loopの狙いと資金調達
Discovery Loopは、仮説の提案、実験の実施、結果の評価、そして反復というサイクルを、高度なAIシステムによって何千回も自動で繰り返すことで、科学研究とエンジニアリング業務のスピードと質を根本的に変えることを目指している。同社は「少数の人間が、大規模な科学者・エンジニアチームよりも迅速かつ高品質な研究・エンジニアリング業務を遂行できる未来」をビジョンに掲げており、AIによる再帰的な自己改善プロセスを通じて人間の反復作業そのものを排除する狙いもあるという。Dean氏は「より高い量と質の実験が得られることで、科学的ブレークスルーにつながる」と説明している。資金調達については、Radical VenturesとKhosla Venturesが主導する初期ラウンドに、Alphabetを含む複数の投資家が参加した。Googleは創業投資家としてDiscovery Loopに関与を続けるほか、少なくとも1年間分のクラウドコンピューティングリソースを提供するとされる。
背景とGoogleへの影響
Dean氏は現在58歳で、ワシントン大学(UW)でコンピュータサイエンスの博士号を1996年に取得している。今回の退社は、AI業界における人材獲得競争が激化する中で、トップクラスの研究者がビッグテック企業から独立系スタートアップへ流出する動きを象徴する出来事として受け止められている。Google社内では、長年にわたり技術的支柱であり続けたDeanの離脱による動揺が広がっているとも報じられている。一方でGoogleが投資家およびクラウドパートナーとして関与を続ける形は、主要人材の流出後も一定の関係を保とうとするビッグテック企業の対応として注目される。
今後の展望
Discovery Loopは、AIによる科学研究の自動化という野心的な目標を掲げてスタートを切ったが、具体的な製品やサービスの詳細、他の主要メンバーの参加状況などは今後明らかになっていく見通しだ。GoogleにとってはDean氏らの離脱後の研究体制の立て直しが課題となる一方、AI業界全体にとっては、既存の大企業に依存しない形で最先端の研究者が独立して新たな挑戦を始める動きが今後も続くかが注目される。