概要

WindowsアプリケーションをLinuxなどのUnix系OS上でネイティブに近い形で実行できるオープンソースの互換レイヤー「Wine」の最新開発版、Wine 11.15が8月8日にリリースされた。今回のリリースでは、ARM64EC対応やローカルNTLM認証のサポートといった新機能に加え、Wayland関連の表示不具合や20年越しのMSXML3関連バグなど、合計41件の不具合修正が行われている。Wineは2週間ごとに開発版をリリースするサイクルを続けており、今回もその一環となる。

技術的な詳細

最大の目玉は「ARM64EC builds in MinGW mode」のサポートだ。ARM64ECはマイクロソフトが定義するアプリケーションバイナリインターフェース(ABI)で、ネイティブなARM64コードとx64向けコンポーネントを同一アプリケーション内に共存させることを可能にする。これにより、ARM64環境でx86/x64向けバイナリとネイティブコードを組み合わせたアプリケーションの互換性向上が期待できる。

認証まわりでは「local NTLM authentication」への対応が追加された。NTLMは多くのWindowsアプリケーションやサービスで今なお使用されている認証プロトコルであり、これに対応したことで該当アプリの動作改善が見込まれる。また、暗号関連ではBCrypt実装が追加の鍵導出関数アルゴリズムをサポートするよう拡張され、WindowsCodecsではより多くの画像形式の変換に対応した。

バグ修正の面では、OpenGLアプリケーションで発生していた色のくすみ(washed-out colors)や、Wayland/EGL関連の不具合が解消された。特にWayland環境では、固定解像度の4:3フルスクリーンアプリケーションでコンテンツの表示位置がずれる問題が修正されている。ゲーム関連では「Lemmings Revolution」の終了時クラッシュや「Rainbow Six: Lockdown」のレンダリング不具合などが対処されたほか、Steam関連のマウス挙動、32ビットアプリケーションのクラッシュ、DPI設定下でのダイアログサイズの問題といった複数の回帰不具合も解決されている。

今後の展望

Wineは今回のような小刻みな開発版リリースを積み重ねることで互換性の穴を継続的に埋めており、次の安定版に向けた機能の熟成が進んでいる。ARM64EC対応の強化は、ARM64ベースのLinux環境が広がる中でWineの適用範囲をさらに押し広げるものとなりそうだ。