概要
韓国SK hynixは8月7日、取締役会で龍仁(ヨンイン)のDRAM新工場「Y2」と清州(チョンジュ)のNAND新工場「M17」の建設に総額54兆ウォン(約380億ドル)を投じる計画を承認したと発表した。世界第2位のメモリメーカーである同社は、AI関連需要の急増によって続く半導体メモリ不足の解消に向け、生産能力の倍増を急ぐ姿勢を鮮明にした。同社は今回の決定について「AIデータセンター需要の急増に対応するため」と説明しており、供給能力そのものが競争力を左右するAI時代の市場環境を踏まえた投資と位置付けている。
投資の内訳と建設計画
投資額の内訳は、龍仁Y2工場に35.2兆ウォン(約240億〜250億ドル)、清州M17工場に19.1兆ウォン(約130億〜140億ドル)となっている。Y2工場は敷地面積約113万平方メートルで、次世代DRAMおよびNvidiaなどAI半導体メーカー向けの高帯域幅メモリ(HBM)を製造する拠点となる予定で、2027年7月に着工し、2029年6月に最初のクリーンルームが稼働、2031年10月に投資完了となる見込みだ。一方、清州M17工場は敷地面積約68万1000平方メートルでNAND型フラッシュメモリを生産し、2027年2月着工、2028年12月に最初のクリーンルームが稼働、2031年4月に投資完了する計画となっている。
今回の投資は、SK hynixが6月に発表した長期計画の一部でもある。同社は龍仁クラスタ全体に600兆ウォン、清州には100兆ウォンを投じる方針を示しており、当初2045年としていた龍仁クラスタの4工場すべての完成時期を、今回2033年へと12年前倒しする目標を掲げた。
AI需要とメモリ価格への影響
背景にあるのは、AIインフラ向けデータセンターの構築ラッシュとNvidiaなどのAI半導体メーカーによるHBM需要の急拡大だ。SK hynixはHBM市場で売上高シェア58%を握る首位メーカーであり、AI向け高性能メモリの供給逼迫が続く中で顧客からの引き合いが強まっている。この需要急増はメモリ価格の高騰にもつながっており、Counterpoint Researchのアナリスト、Neil Shah氏は「需要の伸びが計画中の生産能力拡大を上回っており、メモリ価格が2028年末より前に軟化する可能性は低い」と指摘する。新工場の稼働開始までには数年を要するため、当面は価格上昇圧力が続くとみられ、SamsungなどのメーカーもAIデータセンター向けにチップの大半を割り当てていることから、コンシューマー向けメモリの供給不足も引き続き懸念される状況にある。