概要

Anthropicは8月4日、マリアーノ・フロレンティノ(ティノ)・クエヤル氏を同社初代チーフ・グローバル・アフェアーズ・オフィサーに任命したと発表した。クエヤル氏はポリシーおよび政府関係を統括し、Anthropic社長のダニエラ・アモデイ氏に直接報告する体制で、サンフランシスコの本社を拠点に業務にあたる。今回の人事は、トランプ政権との緊張が続くなかでの対外交渉体制の立て直しを狙ったものであり、Anthropicが政府対応の専任トップを置くのは今回が初めてとなる。

クエヤル氏の経歴

クエヤル氏はハーバード大学(1993年卒、同大コーポレーション委員)出身で、オバマ政権下ではホワイトハウスの特別補佐官を務めた経歴を持つ。その後カリフォルニア州最高裁判事に就任し、直近では国際政策シンクタンクのカーネギー国際平和財団の会長を7月まで務めていた。現在はスタンフォード大学ロースクールの教授およびAI関連の上級フェローを兼任するほか、ジョー・バイデン前大統領の情報諮問委員会委員や、カリフォルニア州知事による最先端AIモデルに関する作業部会の共同議長も歴任しており、司法・外交・AI政策の各分野にまたがる幅広い知見を持つ人物である。

背景にある政府との対立

この人事の背景には、Anthropicと米政府の間で深まる摩擦がある。国防総省は今年3月、Claudeモデルの自律型兵器や米国民に対する大規模監視への利用をAnthropicが拒否したことを理由に、同社をサプライチェーン上のリスクと認定した。Anthropicはこのブラックリスト指定を不服として政府を提訴しており、訴訟は現在も係争中である。加えて、トランプ政権は国家安全保障上の懸念を理由に、Anthropicの最上位モデルである「Mythos 5」および「Fable 5」の海外への販売を一時的に禁じる輸出規制の指令を下してもいる。

今後の展望

Anthropicにとって、国防総省との訴訟と輸出規制という二重の課題を抱えるなか、司法・政策両面での経験を持つクエヤル氏の起用は、政府との関係修復とAIガバナンスを巡る対話再構築への布石と見られる。同氏が政策・国際関係の統括者として、今後Anthropicと米政権との関係がどう変化していくかが注目される。