概要
Samsungは8月4日から米カリフォルニア州サンタクララで開催された「Future of Memory and Storage(FMS)2026」において、AIデータセンター向けの次世代メモリ技術3種、zHBM・zNAND-O・V10 BV-NANDを発表した。いずれも先進的なウェハー接合(wafer bonding)技術を基盤としており、大規模AIトレーニングにおけるメモリ帯域幅のボトルネック、発熱、電力効率という3つの課題への対応を狙う。SamsungはzHBMとzNAND-Oについて業界初のコンセプトモデルを披露したとしている。
zHBM:メモリをアクセラレータの真上に積層
zHBMは、HBM(High Bandwidth Memory)を根本的に再設計したアーキテクチャである。従来のHBMはAIプロセッサの隣に水平配置されるのが一般的だが、zHBMは次世代ウェハー接合技術を用いてメモリをAIアクセラレータの真上に垂直積層する。これによりメモリとプロセッサ間の物理的距離を最小化し、データ転送の遅延を大幅に削減する狙いだ。
性能面では、HBM5比で最大8倍の性能向上、同じ実装面積で10倍以上のメモリ密度、エネルギー効率は3倍改善、熱抵抗は50%以上削減されるとしている。また、カスタマイズ可能なIP層を備え、特定のAIワークロード向けにロジックを追加できる点も特徴として挙げられている。ただし、これらの数値の詳細な算出根拠は現時点で公開されていない。
zNAND-OとV10 BV-NAND:NANDにもウェハー接合を適用
zNAND-Oは、SamsungのV-NAND技術をベースにしたエッジAI向けの高性能NANDソリューションで、4層および8層構成の開発が進められている。高い空間効率と改善されたI/O性能、低レイテンシを特徴とし、リアルタイムのデータ処理を要するエッジAI用途を想定する。
一方のV10 BV-NAND(Bonding V-NAND)は、業界で初めてウェハー接合技術をNANDフラッシュに適用したアーキテクチャで、400層を超える積層数を実現したプロトタイプとして披露された。ウェハー接合では、メモリセルとペリフェラル(周辺)ロジックを別々のウェハーで製造し、後から貼り合わせる製法を採る。これにより、従来の単一ウェハー上に全層を積み上げる方式に比べ高密度化がしやすくなる。前世代のV9と比較して、ストレージ密度は約58%向上したほか、読み書き性能やI/O性能も改善されたという。
今後の見通し
今回発表された3技術はいずれもコンセプトモデルやプロトタイプの段階であり、量産・製品化の具体的な時期は明らかにされていない。生成AIの普及に伴いAIアクセラレータの計算能力は急速に向上している一方、メモリからのデータ供給が追いつかない「メモリウォール」問題が業界共通の課題となっている。Samsungは今回の技術群を通じて、演算性能の向上にメモリ側の帯域・密度・熱特性を追随させる方向性を示した形で、HBMやNANDの次世代開発競争は今後さらに激化するとみられる。