概要

中国のヒューマノイドロボット企業Unitree Robotics(本社:杭州、正式名称:杭州宇樹科技/Yushu Technology)は8月6日、上海証券取引所のイノベーション企業向け市場「科創板(STARマーケット)」で実施するIPOの価格を1株150.8元(約22.34ドル)に決定したと発表した。この価格は企業価値換算で約610億元(約90億4000万ドル)に相当し、当初目標としていた最大500億元を大きく上回る水準となった。新規発行株式数は4045万株で、発行後の総株式数の約10%にあたる。調達額は約61億元(約9億400万ドル)となり、中国本土市場に上場する初のヒューマノイドロボットメーカーとして大きな注目を集めている。株式の申込期間は8月10日に開始される予定。

IPO条件と資金使途

調達資金の内訳は、ロボットのモデル開発(AI・ソフトウェア関連)に約20億2200万元(全体の48%)、ロボット本体のハードウェア開発に約11億1000万元、新製品の研究開発に約4億4500万元、製造拠点の拡充に約6億2400万元が充てられる計画で、ソフトウェアとハードウェアの両面から次世代ロボットの開発体制を強化する狙いがある。目論見書では、中国のAI企業DeepSeekが戦略的投資家として参加していることも明らかになっており、中国AI業界内での連携の強さを示す動きとして注目されている。

業績とヒューマノイド事業の急成長

Unitreeは2025年、世界で5500台以上のヒューマノイドロボットを出荷し、出荷台数で世界首位となった。同社の事業構成は急速に変化しており、2023年時点では売上の75.78%を四足歩行ロボットが占めていたのに対し、2025年にはヒューマノイドロボット事業の売上が8億6780万元に達し、全体の51.78%を占めるまでに拡大した。2025年通期の売上高は17億元と前年から4倍以上に急増し、2026年第1四半期も前年同期比68.5%増の4億2280万元を記録するなど高い成長率を維持している。同社は2026年上半期の売上高を10億5200万11億2800万元(前年同期比3545%増)と見込んでいる。一方で、研究開発費とマーケティング費用の増加により調整後利益は前年比52.6%減の4030万元にとどまっており、急成長の裏で収益性には課題も残る。株価水準は2025年売上高ベースで株価売上高倍率(PSR)約36倍に達しており、市場の高い成長期待を織り込んだ評価となっている。共同創業者のChen Li氏は、身体性を備えたAI(エンボディードAI)が成熟したと言える基準について、「未知のシナリオの80%において、音声やテキストによる指示だけでタスクの80%を完了できること」と述べている。

米中摩擦という逆風

Unitreeのロボットは走行やダンス、アクロバティックな動作のデモンストレーションで知られ、米国での販売承認も取得済みだが、同社の売上に占める米国向けの比率は13.3%にのぼる。目論見書では、米中間の関税や調達制限、輸出規制が今後の海外展開に影響を及ぼすリスクが明記されている。米国はすでに外国製のヒューマノイド型・四足歩行型ロボットに対する規制を導入しており、これに対し中国政府も特定の米国企業を対象とした輸出規制で応じるなど、両国間の緊張が高まっている。こうした地政学的リスクは、中国本土初のヒューマノイドロボット上場企業として高い評価を得たUnitreeの今後の国際展開における不確実性として残っている。