概要
Cloudflareは「Agents Week」の一環として、AIエージェント向けの新しい実行環境ライブラリ「@cloudflare/computer」をプレビュー公開した。エージェントごとに専用のコンテナを割り当てる従来型のアプローチとは異なり、軽量な「アイソレート」とフルLinuxコンテナを動的に使い分けることで、効率性とスケーラビリティを両立させる狙いがある。オープンソースとして公開されており、ファイル操作やGitリポジトリ管理といった軽量なタスクはアイソレートで処理し、npmパッケージやネイティブバイナリの実行が必要な場合にのみコンテナへ切り替えるという、エージェント自身が実行環境を選択する仕組みを持つ。
技術的な詳細
@cloudflare/computerの中核には、SQLiteでバックアップされた仮想ファイルシステムがある。アイソレート実行環境では、シェルコマンドをJavaScriptに変換する「just-bash」という仕組みを用い、Cloudflareの動的ワーカー上でコードを実行する。一方、Linuxやnpm、ネイティブバイナリを必要とする処理ではコンテナを起動し、FUSE(Filesystem in Userspace)マウントを介してアイソレート側の仮想ファイルシステムとファイルを同期する。エージェントは「ファイル操作、データ処理、Gitリポジトリ管理ならアイソレートで実行可能。Linuxやnpm、ネイティブバイナリが必要ならコンテナを使用」という判断を自動的に行い、Cloudflareはこの設計により全作業のうちコンテナ利用を10%未満に抑えることを目標に掲げている。
背景と今後の展望
この取り組みの背景には、スケーリングに関する切実な課題がある。Cloudflareは「世界中のすべてのクラウドとハイパースケーラーにおいて、各ユーザーのエージェントに独立したコンテナ環境を提供できる計算資源は存在しない」と指摘し、コンテナ中心のアーキテクチャでは持続可能なスケールを実現できないとの立場を示す。Cloudflareは10年前のCloudflare Workers導入以来、アイソレート技術に投資を続けてきた企業であり、水平スケーリングのしやすさや高速な起動・終了、休止状態への移行、状態保存といった特性を活かす形で今回のハイブリッド設計に至った。同社はすでに、JavaScriptアプリケーションの構築・テスト・デプロイ、顧客向けドキュメント生成、ブラウザ操作を伴う複雑なタスクの実行など、アイソレートのみで完結する実運用例を複数報告しており、「最も有能なエージェントが共通に持つことは簡潔だ。自分で作業するコンピュータが与えられていることだ」との考えのもと、今後もエージェント向けインフラの拡充を進める方針とみられる。