概要

Appleは8月3日、元従業員2名(Tang Tan氏、Chang Liu氏)を通じてOpenAIが自社のハードウェア開発に関する機密情報を不正利用したと主張する訴訟で、連邦地裁に仮差止命令(preliminary injunction)を申し立てた。OpenAIと両氏に対し、Appleの営業秘密へのアクセス、取得、使用、開示を禁じることを求めるもので、Appleは「仮差止命令なしには回復不可能な損害を被る」と主張している。OpenAIは同日中に「Apple is getting this wrong」と題する詳細な公開反論ブログを発表し、内部メッセージやメールの記録を公開して対抗した。審理は2026年10月1日に予定されている。

訴訟の経緯と主張の内容

Appleは7月10日、Liu氏とTan氏がAI関連ハードウェア開発に向けてAppleの機密情報を持ち出す計画を実行したと主張して両氏とOpenAIを提訴していた。Appleの申立によれば、OpenAIの採用プロセス自体がAppleの機密情報を収集する手段として機能していたとされ、この情報が「OpenAIのコンシューマーハードウェア市場への進出」に利用されたと主張している。Appleの申立書では、約400人の元Apple従業員が現在OpenAIに在籍しているとも指摘されている。

申立に先立ち、Apple側はOpenAIに対して(1)機密情報へのアクセス中止、(2)使用・開示の停止、(3)証拠の保全、(4)司法的なフォレンジック検査の許可、(5)システムからの機密情報回収、の5項目を要求していた。OpenAIは最初の3項目には同意したものの、フォレンジック検査と情報回収の2項目については合意に至らなかったため、Appleは今回、これらを含む措置を裁判所に求める形となった。Appleは仮差止命令の申立と併せて、発見手続(ディスカバリー)の迅速化も求めている。

OpenAIの反論

OpenAIは公開ブログで、今回の訴訟を「ずさんで、攻撃的で、奇妙に個人的」と強く批判した。まず訴訟提起に至る経緯について、Appleの外部弁護士が2月にアジア系の姓を混同し、誤った人物にメールを送っていたことを明らかにし、当時のメールのやり取りとApple側弁護士による謝罪の文面を公開した。OpenAI側は、この誤送信の後、具体的な容疑についてApple側から5ヶ月間何の連絡もなかったと説明している。

Chang Liu氏を巡っては、OpenAIは同氏が1月22日にAppleを退職した後も、Apple従業員が同氏にiMessageで社内ファイルの所在や技術情報について繰り返し問い合わせていたことを示すメッセージ記録を公開した。中にはApple従業員が同僚に対し、Liu氏のApple関連iCloudアカウントからAirDropでファイルを転送するよう指示していたやり取りも含まれており、3月5日時点でも同様の問い合わせが続いていたとしている。一方、Tan氏についてはApple在籍24年を経て、Jony Ive氏と共同設立したハードウェアスタートアップio Productsに参画し、同社は2025年7月にOpenAIと合併した経緯がある。OpenAIは「Tanは一貫して、他社の機密情報を使用したり必要としたりしないという方針をチームに明確に伝えてきた」と擁護している。

今後の見通し

仮差止命令に関する公開審問は2026年10月1日に予定されており、それまでにOpenAI側が正式な反論書面を提出するとみられる。Appleが求める即時のアクセス停止やフォレンジック検査が認められるかどうかは、AI業界における人材移動や技術情報の扱いを巡る今後の法的先例としても注目される。両社の主張は真っ向から対立しており、審理では退職前後のやり取りや採用プロセスの詳細がさらに明らかになる可能性がある。