概要
サムスン電子は7月30日、四半期営業利益が前年同期比19倍以上に急増し89.5兆ウォン(約624億ドル)に達したと発表した。これはNvidiaの同期間の利益を上回る水準で、記録的な決算となった。利益急増の主因は半導体部門で、AIチップ需要の高まりを背景に営業利益が200倍以上に跳ね上がった。一方でサムスンは、AI需要による半導体メモリの供給不足が2027年にかけてさらに深刻化し、2028年まで続く可能性があると警告した。この見通しを受けて競合のマイクロン・テクノロジー株も2営業日で24%急騰するなど、メモリ不足懸念が半導体業界全体の株式市場に波及している。
メモリ不足の背景と見通し
サムスンによれば、エージェント型AIの普及がモデル学習向け需要に上乗せされ、AIサーバーをはじめとする演算インフラ向けメモリ需要が「前例のない」水準まで押し上げられている。メモリメーカー各社がAIサーバー向け部材の生産を優先する結果、PCやスマートフォンなど主流製品向けメモリが不足する構図が生まれている。サムスンのメモリ事業担当EVPであるKim Jaejune氏は、工場建設から量産開始までのリードタイムが3年を超えると説明。複数のDRAMサプライヤーが2027年に新ラインの稼働を計画しているものの、建設や設備導入などの工程を経て本格的な増産が実現するのは2027年後半以降であり、大幅な供給増は2028年まで見込めないとの見方を示した。
HBM4と長期供給契約
サムスンは世界で初めて次世代の高帯域幅メモリ「HBM4」の商用出荷を開始した。同社はNvidiaの次世代アクセラレータ「Vera Rubin」向けにもHBM4を供給する主要サプライヤーの一角となっている。さらに長期供給契約により、計画生産能力の最大70%を確保できる見通しだとしている。業界予測では、HBM4の需要が今後3年間にわたり製造能力を上回る状態が続くとみられており、サムスンをはじめとする主要メモリメーカーにとって高い収益性が持続する環境が続く可能性がある。同社はテキサス州テイラーでの第二工場建設についても検討を進めている。
マイクロン株への波及
サムスンの警告を受け、マイクロン・テクノロジーの株価は水曜終値の739ドルから2営業日で約24%急騰し、以前の調整局面での安値である約707ドルから874.66ドル(前日比18.36%高)まで回復した後、時間外取引ではさらに919.29ドルまで買われた。過去最高値の約1,255ドルにはまだ届かないものの、格付け会社ムーディーズはマイクロンの優先無担保債格付けを「Baa2」から「Baa1」に引き上げた。背景には、DRAM・NAND市場の構造変化や戦略的な顧客契約による収益の見通し向上がある。ムーディーズは、マイクロンの売上高が2026会計年度の1,290億ドルから2027会計年度には2,300億ドルに拡大し、フリーキャッシュフローも580億ドルから1,140億ドルに増加すると予測。2030年までの戦略的顧客契約は総額約1,000億ドル規模に上るとみられている。マイクロンはすでにHBM4の大量出荷を開始し、次世代AIサーバー向けの256GB DDR5モジュールの認証も進めている。一方でリスク要因として、中国ChangXin Memory Technologies(CXMT)の増産や、著名投資家Michael Burry氏によるショートポジション拡大、マイクロンCEOによる3,700万ドル超のインサイダー株式売却なども指摘されている。