概要

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)の報道によると、テスラは上海工場を含む中国事業について、スピンオフ・売却・段階的な縮小といった複数の選択肢を検討しているという。これはイーロン・マスク氏が率いるSpaceXとの将来的な合併に向けた地ならしとみられている。報道を受けてテスラ株は時間外取引で一時2%ほど上昇したが、マスク氏はX(旧Twitter)上で「このことについて議論に上ったことすらない」と述べ、報道内容を完全に否定した。もっとも、マスク氏の過去の否定発言はしばしば後に覆されてきた経緯があり、市場では今回の否定についても「割り引いて受け止めるべき」との見方が根強い。

中国事業の規模と重要性

報道の焦点となっている上海ギガファクトリーは、テスラにとって単なる一拠点ではない。同工場は昨年12月に中国製4百万台目の車両を生産し、テスラのグローバル納車台数の半数以上を担う、世界最大かつ最も生産性の高い製造拠点となっている。部品調達も現地化が進み、年間95%以上を中国国内で賄っているとされる。仮にこの巨大な生産基盤を手放すとなれば、テスラの事業構造そのものを大きく変える決断となる。

合併が浮上する背景

SpaceXとの合併が取り沙汰される背景には、両社の事業的な接近がある。テスラの決算説明会でマスク氏は、AIチップ生産拠点「Terafab」などを巡って両社の「重なりがますます増えている」と認めた上で、詳細については法務担当者に判断を委ねる発言をしており、水面下で何らかの再編議論が進んでいる可能性を示唆していた。一方でSpaceXは米国防総省の衛星プログラムなどを担う主要な防衛関連請負業者でもある。中国に巨大な製造拠点を持つテスラをこの防衛関連企業に統合することは、米当局にとって安全保障上の大きな懸念材料となりかねず、規制面で高いハードルとなる。中国事業の切り離しは、こうした地政学的な障壁を取り除くための布石ではないかという見立てが今回の報道の核心にある。

今後の見通し

一部の分析では、仮にこうした再編が実現すれば、テスラは事実上SpaceXおよびxAIを含むマスク氏の持株会社の一部門へと変質し、テスラの既存株主にとってはマスク氏の支配権集中を利する「セルフディール」的な構図になりかねないとの懸念も示されている。マスク氏は報道を明確に否定しているものの、決算説明会での発言との整合性を疑問視する声もあり、テスラとSpaceXの関係を巡る観測は今後も市場の注目を集めそうだ。