概要
Google DeepMindは2026年7月30日、次世代ロボティクスAIモデルファミリー「Gemini Robotics 2」を発表した。従来のテーブルトップ上での操作にとどまっていたロボットAIを、歩行や屈伸を含む全身の統合制御、5本指ハンドによる繊細な器用さ、そして複数ロボットの協働という3つの方向に拡張するのが狙いだ。DeepMindはこれを「あらかじめプログラムされた狭い作業手順」を超えて、物理世界で汎用的に機能する知能、いわば「物理世界のAGI」実現に向けた重要なマイルストーンと位置づけている。
Gemini Robotics 2は単一のモデルではなく、役割の異なる3つのモデルで構成される。まず、視覚と言語の入力をモーター制御コマンドに変換する「Gemini Robotics 2」(Vision-Language-Actionモデル、VLA)。次に、シーン理解や複数ステップのタスク計画、人間とのコミュニケーションを担う「高度な脳」にあたる身体化推論モデル「Gemini Robotics ER 2」。そしてネットワーク接続なしでロボット本体上でローカル実行できる軽量版「Gemini Robotics On-Device 2」である。ER 2はGemini 3.5 Flashをベースとし、テキスト・画像・映像・音声を最大128Kトークンのコンテキストで処理できるという。
全身制御と器用さの実現
これまでのGemini Roboticsは主に上半身での物体操作に焦点を当てていたが、今回のバージョンではロボット全体の統合制御に対応した。Apptronik製ヒューマノイド「Apollo 2」を用いたデモでは、「じょうろを緑のゴミ箱に入れて」といった自然言語の指示に対し、ロボットが自ら歩いて対象物のもとへ移動し、把持し、指定の場所へ配置するという一連の動作を実行した。「散らかった部屋を片付ける」のような複雑な指示への対応も可能という。
器用さの面では、22自由度を持つ5本指ハンド「SharpaWave」や二指グリッパー「Franka Duo」など、異なるエンドエフェクタでの操作に対応する。ベンチマーク結果は作業内容によって大きくばらつきがあり、グリッパーによる精密な挿入タスクでは89.6%、一般的なピック&プレイスでは74.2%の成功率を記録した一方、5本指ハンドでは電球を外す作業で92%を達成したものの、電球を取り付け直す作業では36%、ゴミ袋を結ぶ作業では44%にとどまるなど、微細な多指操作は依然として課題領域であることが明らかになっている。
複数ロボットの協働と安全性
ER 2の新機能として、複数のロボットが共有の意味理解に基づいて連携し、単独では成し遂げられない複雑なワークフローを分担して実行する「マルチロボット協働」が挙げられる。デモではApollo 2とFranka F3 Duoがタスクを互いに受け渡す様子が示された。ER 2はさらに、数分間・数百の意思決定にわたる長時間タスクの管理能力を持ち、タスク進捗の分類精度は57.4%、作業完了などの重要イベントの検出精度は91.3%とされている。
安全性への配慮として、DeepMindは新たな評価基準「ASIMOV-Agentic」ベンチマークを導入した。これは、安全でないツール呼び出しを拒否する能力や、人間の接近を検知して安全に動作を停止する能力などを測定するもので、Hugging Face上でCC-BY-4.0ライセンスの下で公開されている。
提供状況と今後の展望
現時点でGemini Robotics ER 2はGoogle AI Studio経由で公開プレビューが提供されており、Gemini Enterprise Agent Platformでも限定プレビューが進行中だ。一方、VLAモデル本体とOn-Device版は、いずれもアーリーアクセスパートナーおよび信頼できるテスター向けに限定提供されている段階で、一般提供の時期は明示されていない。On-Device 2は200例に満たない少数のデータと数時間の訓練だけで新しいロボット形状に適応できる点も特徴的だ。
DeepMindは今回の発表を、単一タスクの自動化から汎用的な物理知能へのシフトの一歩と位置づけており、人間と協働しながら複雑な現実世界の課題を解決できるロボットの実現に向けて開発を継続する構えだ。