概要
中国・北京拠点のAIスタートアップMoonshot AIが、評価額350億ドル(約5兆円超)で35億ドルの資金調達を完了したことがBloombergの報道で明らかになった。当初の調達目標は10億~20億ドル程度とされていたが、投資家からの応募が想定を大きく上回り、目標を大幅に超える金額での調達となった。出資者の中心には、DeepSeekの支援者でもある国家系ファンド「国家人工知能産業投資基金」が名を連ねている。
Kimi K3が牽引した評価急伸
今回の資金調達を後押ししたのは、Moonshot AIが公開したオープンウェイトモデル「Kimi K3」への反響だ。Kimi K3はパラメータ数2.8兆という世界最大級のオープンウェイトモデルで、100万トークンという大規模なコンテキストウィンドウを備え、大量の文書やコードベースの処理に対応する。性能面ではAnthropicやOpenAIのフロンティアモデルに匹敵するとされ、ベンチマークによってはClaudeやGPTの最新モデルに次ぐ水準に位置づけられる一方、フロントエンドのコード生成やNext.js関連タスクでは上位モデルを上回る結果も示しているという。モデルの重みをHugging Face上でオープンに公開する戦略を取ったことで、シリコンバレーにも波紋を広げ、公開後は日次売上が少なくとも6倍に増加したと報じられている。
事業指標とIPOへの布石
Moonshot AIの年間経常収益(ARR)は6月時点で3億ドルに達し、4月の2億ドルから急拡大している。同社はさらに、税引前評価額500億ドルでの追加資金調達に向けて投資家との交渉を進めているとされ、これは香港での新規株式公開(IPO)を見据えた最終ラウンドと位置づけられている。IPOは早ければ年内の実施を目指しているという。中国のAI企業では、1月に香港上場を果たしたZ.AIの株価がその後約10倍に上昇しているほか、MiniMaxも香港上場を非公開で申請しているとされ、Moonshot AIの動きは中国AI企業による香港市場での資金調達ラッシュの一環と見ることができる。
懸念材料
一方で、Kimi K3を巡ってはホワイトハウス関係者から、性能制限が課されたNvidia製チップを用いて学習された可能性や、既存の欧米モデルからの蒸留(distillation)によって能力を獲得しているのではないかとの懸念も指摘されている。オープンウェイト戦略によって急速に存在感を高める中国発モデルに対し、データやモデル出所を巡る警戒感も同時に強まっている。