概要
HashiCorpは2026年7月23日、HCP TerraformおよびTerraform Enterpriseの新機能群を発表した。目玉は誤って削除したワークスペースやスタックを復元できる機能で、Standardプラン・Premiumプランのユーザーが対象となる。あわせて単一リポジトリで複数のスタックを管理できるモノレポ対応、ワークスペースからスタックへの移行を支援するCLIツールなども公開されており、いずれもプラットフォームチームの運用負荷とガバナンスリスクを軽減する狙いがある。大規模なインフラをTerraformで管理する組織にとって、実務上のかゆいところに手が届くアップデートといえる。
復元機能の詳細
削除されたワークスペースやスタックは即座に消えるのではなく、「回復可能アイテム」ページに移動し、削除後30日間保持される。この間であれば、実行履歴や最後に確認済みの状態(state)、変数やVCS接続などのワークスペース設定を含めて、管理者がワンクリックで元の状態に復元できる。従来はワークスペースを誤削除した場合、リソースを1つずつ手動で再インポートするなどの煩雑な復旧作業が必要だったが、この機能によりヒューマンエラーによる事故対応のコストが大幅に下がることになる。
モノレポ対応とCLI移行支援
モノレポ対応では、単一リポジトリ内の指定したサブディレクトリを起点にTerraformを実行できるようになり、複数のスタックが共通モジュールを共有する構成が組みやすくなった。あわせて、ファイルの変更パターンに基づくフィルタリング機能により、実際に関連するファイルが変更された場合のみplan/applyサイクルが走るようになり、無駄な実行を削減できる。また、ワークスペースからスタックへの移行を支援するCLIツールもパブリックベータとして公開された。モジュール式の「ツールボックス」アプローチを採用しており、ユーザーは移行の各段階を検証・制御しながら段階的に進められるほか、自動化やAIワークフローへの組み込みも可能になっている。
その他のアップデート
このほか、プロジェクト単位でアーティファクトにタグを付けてプロジェクトレジストリビューで一元管理できる「レジストリタグ」、組織全体ではなくプロジェクトやワークスペース単位でポリシーの上書き権限を委譲できる機能もGAとして提供が始まった。これらの機能はいずれも、組織全体に強い権限を与えるのではなく、チーム単位で柔軟かつ安全に運用範囲を委譲できるようにする方向性を示しており、エンタープライズ規模でのTerraform運用における信頼性向上に寄与するとみられる。