概要
SpaceXは2026年7月24日22時51分(UTC)、テキサス州Starbaseから「Starship」第13回試験飛行を実施した。今回の飛行は、SpaceXが6月に実施した過去最大規模となる新規株式公開(IPO、ティッカー:SPCX)後、上場企業として初めて行う大型試験飛行であり、投資家からの注目を集めた。7月16日に予定されていた打ち上げはエンジン点火不良により自動中断となり、その後天候不良も重なって延期が続いていたが、機体の一部エンジン交換などの対応を経て今回の実施に至った。ミッションの主目的である次世代Starlink衛星「V3」の初展開には成功した一方、機体の回収においてはブースターとStarship上段とで明暗が分かれる結果となった。
Starlink V3衛星と技術的意義
今回のミッションでは、次世代通信衛星「Starlink V3」を搭載した初めてのStarship飛行として、20基のV3衛星を軌道下(サブオービタル)に展開した。V3衛星はダウンリンク最大1Tbpsを実現し、従来のV2衛星の10倍の通信容量を持つほか、アップリンクも160Gbpsと従来比22倍に強化されている。今回展開された衛星は正式な運用軌道には投入されず、太陽電池パネルやアンテナ、既存のStarlinkコンステレーションとのレーザー通信リンクなど各種システムの検証を目的としたもので、展開からおよそ20分後に大気圏に再突入し燃え尽きる想定だった。また一部の衛星にはカメラが搭載され、Starship上段(Ship 40)の耐熱シールドの状態を宇宙空間から撮影・伝送する役割も担った。
ブースターとStarship上段の飛行結果
打ち上げから約2分後、1段目の大型ブースター「Super Heavy」は計画通り分離した。しかしその後の帰還シーケンスでは、着陸燃焼のためのエンジン再点火において、点火予定だった13基中10基程度しか正常に着火せず、メキシコ湾への着水は「ハード(硬着水)」な失敗という結果に終わった。一方、Starship上段(Ship 40)は軌道下弾道飛行の経路をたどった後、インド洋への軟着水に成功。着水後に船体が横転したものの機体は破損せず一体を保ち、これは同型機として初めての成果となった。耐熱シールドも展開衛星のカメラ越しに撮影された結果、健全な状態を保っていたことが確認されており、SpaceXは今回の飛行についてブースターの着水失敗はあったものの、主要目的は達成した「部分的成功」と位置づけている。
株式市場の反応と今後の展望
SpaceXは6月のIPOで新株引受人のオプション分を含め857億ドルを調達し、史上最大規模の上場として話題を呼んだが、その後の株価は軟調に推移している。今回の飛行が主要目標を達成したにもかかわらず、SPCX株の反応は限定的で、試験飛行後の株価は1株115ドル前後で推移し、IPO価格である135ドルを約15%下回る水準にとどまった。これは6月16日につけた上場来高値からおよそ43%の下落に相当し、過去最安値110.85ドルとの差もわずかだった。アナリストのTim Farrar氏は、SpaceXが機体全体の迅速な再使用達成にはまだ遠い状況にあると指摘しており、投資家の間では華々しい打ち上げの成果よりも、資金を大量に消費し続けるStarshipプログラムの持続可能性への懸念が根強いことがうかがえる。次回以降の試験飛行では、ブースターの着水成功とあわせて、機体の完全な再使用に向けた技術実証が焦点となる見込みだ。