概要
自律型オフェンシブセキュリティ企業XBOWは、Bingの画像処理基盤に2件の重大なリモートコード実行(RCE)の脆弱性を発見した。これは「画像で検索」機能と逆画像検索(クローラー取得)に存在したもので、認証不要のまま細工したSVGファイルを送信するだけで、Microsoftの本番サーバー上でWindowsならNT AUTHORITY\SYSTEM、Linuxならroot権限のコマンドを実行できる状態だった。両脆弱性はCVE-2026-32194およびCVE-2026-32191として登録され、CVSSスコアはいずれも最大値の9.8。責任ある開示を経てMicrosoftはクラウドサービス側で既に修正を完了しており、ユーザー側での対応は不要とされている。
技術的な詳細
根本原因は、Bingの画像処理パイプラインで使われているImageMagick互換のコンバーターが、SVGファイル内の画像参照を処理する際の挙動にあった。SVGはXMLベースのフォーマットであり、画像参照としてパイプ文字(|)から始まる文字列を指定すると、ImageMagickの「デリゲート」機能がそれを外部プログラムの呼び出しとして解釈してしまう。この仕様を悪用し、パイプ接頭辞付きのシェルコマンドをSVGの参照フィールドに埋め込むことで、バックエンドの画像変換ライブラリに画像のレンダリングではなくOSコマンドとして実行させることが可能だった。攻撃経路は、検索画像アップロード機能のimageBinパラメータ経由(CVE-2026-32194)と、クローラーが外部URLから画像を取得するimgurlパラメータ経由(CVE-2026-32191)の2系統があり、いずれも同じ根本原因を突くものだった。研究者は「アプリケーションは画像処理ヘルパーを単なる変換の配管(パイプライン)として扱っていたが、攻撃者はそれをコマンドを解釈するパーサーとして扱った」と、脆弱性の本質を端的に表現している。
発見の経緯と影響範囲
調査のきっかけは、逆画像検索機能がSSRF(サーバーサイドリクエストフォージェリ)を示唆するような異常なHTTP 500エラーを返したことだった。XBOWの研究者らはこれを手がかりに系統的な検証を進め、最終的にImageMagickのデリゲート機能がSVG処理時に危険な動作をしていることを突き止めた。実際の検証では、Windows Server 2022 Datacenter上で稼働するBingの画像処理ワーカーが影響を受けることが確認されており、単一サーバーに留まらず複数ホスト・複数のネットワーク範囲で再現できたことから、画像処理層全体に脆弱性が及んでいた可能性が指摘されている。なお、Bing Images関連の2件とは別に、Microsoft Devices Pricing Programにおいても実行ファイルの無制限アップロードを許す脆弱性(CVE-2026-21536、CVSS 9.8)が同時に報告されている。発見元のXBOWは自律型AIによる脆弱性診断を行うスタートアップで、Microsoftのバグ報奨金プログラムにおいてAIとして初めて上位10入賞を果たした実績を持つ。
今後の対策
Microsoft側の修正は既に完了しているが、同種の脆弱性は自社で画像処理パイプラインを構築している他の組織にも当てはまり得る。専門家は、ImageMagickの設定で<policy domain="delegate" rights="none" pattern="*" />を指定してデリゲート機能そのものを無効化することを強く推奨している。加えて、SVG・MVG・EPSといった外部プログラム呼び出しのリスクがあるフォーマットの取り扱いを厳格に制限すること、ユーザー指定URLからの画像取得機能に対する厳密なエグレス制御を敷くこと、画像変換処理をサンドボックス化されたプロセスで実行することなども、再発防止策として挙げられている。