概要

Anthropicの非公開市場での評価額が、セカンダリー市場(既存株主間の株式取引市場)での取引を通じて約1.2兆ドルに到達したことが明らかになった。これは同社が5月に実施したシリーズHラウンド時点の評価額9,650億ドルから大幅な上昇となる。同社は6月1日付で非公開のS-1(有価証券届出書)を提出しており、10月にも新規株式公開(IPO)を実施する計画とされる。Bloombergの報道によれば、Anthropicの経営陣はすでに投資銀行や投資家との面談を重ねており、上場に向けた準備が本格化している段階にある。

評価額急騰の背景

わずか2カ月ほどの間に評価額が9,650億ドルから1.2兆ドルへと約2割上昇した背景には、非公開株のセカンダリー取引における投資家の強い需要がある。生成AI市場の拡大を追い風に、OpenAIと合わせた両社の潜在的な合計評価額は1.8兆ドル規模に達するとの試算も出ており、AI関連企業への資金流入が加速している状況がうかがえる。

Amazonなど関連企業への波及効果

この評価額上昇は、Anthropicに出資する企業にも大きな恩恵をもたらす見通しだ。Amazonは同社に約130億ドルを投資し、1520%程度の株式を保有しているとされ、IPOが実現すればその保有株式の価値は1,800億2,400億ドルに達すると試算されている。また、Amazonは2026年4月の投資を通じて、今後10年間で1,000億ドル超のインフラ利用コミットメント(最大5GW分の容量および独自チップの活用を含む)をAnthropicから獲得しており、AWSの顧客基盤拡大にもつながるとの見方が示されている。強力なIPOはAnthropicの財務基盤を強化し、AIインフラへの積極的な投資を継続させる原動力になるとみられている。

懐疑的な見方とリスク要因

一方で、高騰する評価額に対する慎重な声も上がっている。アナリストは「優れた企業であることが、必ずしも優れたIPO価格を意味するわけではない」と指摘し、投資家が将来の成長を先取りして高値をつかむリスクを懸念する。実際、SpaceXやSK Hynixなど需要の強かった直近のAI関連IPOが上場後に株価急落を経験した例もあり、人気企業であっても上場後に売り圧力にさらされる可能性が指摘されている。加えて、半導体メモリ関連株の下落を受けてAI関連投資の持続可能性や投資回収の時間軸に対する市場の疑念も強まっており、「バリュエーションは依然として重要だ」として、上場直後の株式購入ではなく、四半期決算の実績を見極めてから投資判断すべきだとの助言も出ている。

今後の展望

Anthropicは10月のIPOに向けて投資銀行や投資家との調整を進めており、今後数カ月の間に具体的な上場条件や公開価格のレンジが明らかになる見通しだ。1.2兆ドルという評価額が実際の公開価格にどこまで反映されるか、またAmazonをはじめとする既存出資者のリターンや、AI関連銘柄全体の市場心理にどのような影響を与えるかが注目される。