概要

OpenAIは7月9日、ChatGPT・Codex・APIを通じて新モデル群「GPT-5.6」を発表した。これまでの単一モデルによる提供方針を転換し、フラッグシップの「Sol」、バランス型の「Terra」、低コスト・高速な「Luna」という3つの能力ティアを新たに導入した点が最大の特徴となる。Solはコーディングや科学、サイバーセキュリティといった高度なエージェント作業向けに設計されており、難易度の高いタスクで人間の専門家レベルの能力を測る「Agents’ Last Exam」ベンチマークで新記録を達成したと発表されている。Solは高度なサイバーセキュリティ関連の能力を理由に米政府の審査対象となり、6月26日から約2週間は限定されたプレビューパートナーのみへの提供にとどまっていたが、審査を終えた7月9日にはTerra・Luna同様に一般提供が開始された。

3つのモデルティアと価格設定

GPT-5.6ファミリーは用途に応じて選べる3段階構成となっており、価格は百万トークンあたりの入出力コストで示されている。最上位のSolは入力5ドル・出力30ドルで、コーディングと推論において最高性能を発揮するモデルと位置付けられる。中間のTerraは入力2.5ドル・出力15ドルで、日常的なタスクを中程度の性能でこなす選択肢として提供される。最も安価なLunaは入力1ドル・出力6ドルで、コスト効率を重視したユースケース向けとなる。この3段階の価格設定は、単一モデルで全ての用途をカバーしてきたこれまでのアプローチから、用途とコストに応じて使い分ける方向への転換を示している。

技術的な詳細

今回のアップデートでは、Responses APIにおける「プログラマティックなツール呼び出し」機能が新たに実装された点も注目される。モデルが生成したJavaScriptコードを、ネットワークアクセスのない隔離されたV8ランタイム上で実行する仕組みで、安全性を確保しながら自動的なコード実行を可能にする設計となっている。

ベンチマーク面では、Artificial Analysis Coding Agent Indexで80点を記録し、Claude Fable 5の77.2点を上回った。Terminal-Bench 2.1では88.8%を達成し、4つのエージェントを並列実行する「Ultra」機能を用いた場合は91.9%まで向上する。また仮想デスクトップ環境でのタスク遂行能力を測るOSWorld 2.0では62.6%を記録し、Opus 4.8と比較して85%少ないトークン使用量で同等以上の成果を上げたという。一方で、ソフトウェアエンジニアリングタスクを評価するSWE-Bench Proでは64.6%にとどまり、Claude Mythos 5の80%には約15ポイント及ばない結果となっており、モデルごとに得意分野が分かれる実態も明らかになっている。

提供状況と今後の展望

フラッグシップモデルであるSolは、高度なエージェント能力ゆえに米政府の審査対象となり、6月26日から7月9日までの約2週間、限定されたプレビューパートナーのみが利用可能な状況にあった。しかし審査を終えたことで7月9日にはTerra・Lunaとともに一般提供が開始され、企業や開発者も広くその性能を評価できるようになった。今後は、こうした政府主導の事前審査プロセスが他の高性能モデルのリリースにも適用されるかが注目される。