概要
Anthropicの株式が非公開の二次市場(セカンダリーマーケット)で評価額1.2兆ドルに達し、約9,080億ドルとされる競合OpenAIの評価額を初めて上回ったことが明らかになった。この数字は、5月に実施されたシリーズHラウンドでの評価額9,650億ドルからわずか1カ月半ほどでの急騰であり、過去1年間では実に550%という驚異的な伸び率となる。3カ月前の評価額が1兆ドルだったことを踏まえても、その後の上昇ペースは異例の速さだ。
市場の需給が生む「フロス」
今回の評価額急騰の背景にあるのは、業績や収益の伸びというよりも、極端な需給の逼迫だという指摘が多い。ある取引プラットフォームの幹部は「Anthropicはベンチャーのセカンダリー市場がこれまでに見た中で最も引く手あまたの企業だ」と語っている。あるブローカーは「誰も売ろうとしない」状態だと述べており、取引が成立すること自体が稀になっている。需要が供給を大幅に上回るあまり、一部の買い手は自宅とAnthropic株式の交換を持ちかけたとも報じられている。
こうした投資熱の高まりを受け、多くの取引は特別目的事業体(SPV)を経由する形で行われている。しかしAnthropic自身はこうした間接的な投資ルートに対して公式に注意喚起をしており、セカンダリー株式は取締役会の議席や確実な出口(イグジット)を伴わない、流動性の低い少数株主持分に過ぎないと警告している。詐欺のリスクも依然として高いとされ、投資家には慎重な判断が求められている。
IPOを控え、評価額の真価が問われる
Anthropicは6月にIPO(新規株式公開)を非公開で申請しており、数カ月以内の上場が見込まれている。今回の1.2兆ドルという評価額が、企業の実力を反映した正当な水準なのか、それとも公開市場の厳しい審査には耐えられない非公開市場特有の「フロス(泡)」に過ぎないのかは、この上場によって初めて明らかになる見通しだ。AI業界の勢力図を左右しかねないOpenAIとの評価額逆転劇は、IPOに向けた注目をさらに集めることになりそうだ。