概要
中国安徽省合肥市に本拠を置くDRAMメーカー、長鑫存儲技術(ChangXin Memory Technologies、CXMT)が、上海証券取引所のテック企業向け市場「科創板(Star Market)」への上場を計画していることが明らかになった。7月15日にブックビルディング(価格協議)を行い、7月16日から申込を開始する見通しで、調達額は少なくとも295億元(約43億米ドル)に達する見込み。実現すれば、SMICの上場に次ぐStar Market史上2番目の規模のIPOとなり、2026年の中国A株市場でも最大級の新規上場となる。2016年に中国政府の支援を受けて設立されたCXMTは、いまや世界第4位のDRAMメーカーとされ、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジーという既存3強に真っ向から挑む構えを見せている。
業績の急拡大
CXMT躍進の背景には、驚異的な業績の伸びがある。通期売上高は前年比156%増の約86億ドルに達し、2024年の約33億ドル、2023年の約12億ドルから急拡大した。純利益も初めて黒字に転じ、10億ドル規模に達したという。直近の四半期でも売上高が前年同期比719%増となり、前年同期に28億3000万元の赤字だった純利益は330億元の黒字に転換した。同社はサムスンやSKハイニックスが高帯域幅メモリ(HBM)へシフトする過程で手薄になったDDR4など汎用メモリ市場を積極的に取り込み、世界シェアを7.67%まで伸ばした。価格面でも世界大手との差は5~10%以内に縮まっているとされる。主要顧客にはテンセントやバイトダンス(DDR5サーバー向けメモリの発注を開始)、アリババクラウド、レノボ、シャオミ、OPPO、vivoなどが名を連ねる。さらに、アップルがCXMT製メモリの調達に向けて米政府の承認を得ようとロビー活動を行っているとも報じられており、米国企業との取引拡大の可能性も注目されている。
資金使途とHBMを巡る攻防
IPOで調達した資金の使途としては、生産能力の拡張・増強に75億元(約11億ドル)、DRAM技術のアップグレードに130億元(約19億ドル)、次世代技術の研究開発に90億元(約13億ドル)が充てられる計画とされる。CXMTは3D IC技術を用いたカスタムメモリ市場を次の成長の突破口と位置づけているが、HBMをはじめとする先端製品では依然として韓国勢に2~3年遅れているとの指摘もある。AI・データセンター需要の拡大を背景に、中国の半導体市場は2026年に前年比93%増の8121億ドル規模、メモリチップ市場は263%増の4496億ドル規模へと急成長するとの予測もあり、CXMTの上場はこうした市場拡大の波に乗る動きといえる。今回のIPOの成否は、米国の輸出規制下で自国半導体産業の自立を急ぐ中国にとって、大きな試金石となりそうだ。