概要
韓国のメモリ半導体大手SKハイニックスが、米ナスダック市場に「SKHY」の銘柄で上場し、米国預託証券(ADR)を通じて約1,780万株を売り出す計画を発表した。調達額は最大で約280億ドルに達する見込みで、木曜日に価格決定を経て、7月10日から取引が開始される。これは先月のSpaceXによる約857億ドルのIPOに次ぐ、史上2番目の規模の株式売却となる見通しで、サウジアラムコの2019年上場やアリババの2014年上場をも上回る規模だ。正式な価格決定に先立ち、Baillie Gifford Overseas、Coatue Management、Situational Awareness Partnersといった大手機関投資家だけで合計最大70億ドルの購入意向を示しており、市場の関心の高さがうかがえる。
背景にあるAI需要とメモリ不足
今回の大型上場を後押ししているのは、生成AIの急拡大による半導体メモリ需要の爆発的な増加だ。SKハイニックスはNvidiaの主要な高帯域幅メモリ(HBM)供給元としての地位を確立しており、第1四半期の売上高は前年同期比でほぼ200%増加した。AmazonやMicrosoft、Googleなどのハイパースケーラーが「AI工場」とも呼ばれるデータセンター構築を競い合う中、HBMやNAND型メモリの需要が急増し、「RAMageddon」と称されるほどの深刻なメモリチップ不足が発生している。この流れを受けてSKハイニックスの韓国上場株は年初来で約200〜260%、過去12ヶ月では770%という驚異的な上昇を記録し、時価総額は1兆ドルを超えた。同様に米国のMicronも過去1年で約700%上昇し、時価総額が1兆ドル超に達するなど、メモリ業界全体がAIブームの恩恵を受けている。
調達資金の使途と投資家への警告
調達した資金は経営陣による株式売却(キャッシュアウト)ではなく、生産能力の拡大に充てられる予定だ。SKハイニックスは韓国国内での新工場建設に加え、極端紫外線(EUV)露光装置をはじめとする先端製造装置の調達を計画している。SKハイニックスとサムスンの両社を合わせると、新規製造能力への投資額は5,500億ドルを超える見通しだ。一方で、こうした急激な株価上昇と大型投資には警戒の声も上がっている。アナリストの一部は今回のボラティリティを「過度な泡立ちの証拠」と指摘し、アジア通貨危機やドットコムバブル崩壊時に匹敵する値動きだと警鐘を鳴らす。新規設備投資が業界の周期的な供給過剰につながりかねないとの懸念や、その一方で消費者向け電子機器向けのメモリ供給不足が深刻化しているとの指摘もあり、「好材料はすでに株価に織り込まれている」との慎重な見方も出ている。
今後の展望
SKハイニックスのナスダック上場は、AI関連投資が過熱局面にあるのか、それとも実需に裏打ちされた持続的な成長軌道にあるのかを占う試金石として、市場関係者から注目されている。7月10日の取引開始後の株価動向は、AIインフラ投資ブーム全体に対する投資家心理を測る重要な指標になるとみられる。