概要
サムスン電子は2026年4-6月期(第2四半期)の営業利益予想を発表し、前年同期の4兆6,800億ウォンから約19倍(1,800%増)となる89兆4,000億ウォン(約584億ドル)に達したと明らかにした。これはテクノロジー企業として四半期ベースで過去最大の営業利益であり、3四半期連続の最高値更新となる。売上高も171兆ウォンと前年の74兆5,700億ウォンから2倍以上に拡大し、前年比では129%の増収となった。前四半期(1-3月期)からも営業利益は約56%増加しており、AI向け半導体メモリーの需給逼迫が業績を大きく押し上げた形だ。
一方で好決算の発表にもかかわらず、サムスン電子の株価は急落した。取引時間中には一時10%超下落し、終値でも前日比7%近く下げて引けた。この影響で同社の時価総額は1,000億ドル(約875億ユーロ)超が失われ、競合のSKハイニックスや韓国総合株価指数(KOSPI)も連れ安となった。サムスン株は2026年に入ってから既に2倍以上に上昇していたため、好材料の織り込み済みによる利益確定売りが下落の一因とみられる。
技術的な詳細
今回の利益急増の背景には、メモリー価格の大幅な上昇がある。Citi Researchの分析によれば、DRAMの契約価格は四半期比で約44%上昇し、NANDフラッシュメモリーも約53%上昇した。特に高帯域幅メモリー(HBM)は最も収益性の高いセグメントとなっており、サムスン電子は2025年9月にNvidiaのHBM3E(12層積層)品質認証を取得するという重要な節目を達成していた。これは従来課題となっていた熱性能の問題を克服した成果であり、AI向けメモリー市場での競争力強化につながっている。
AIサーバー向けメモリー需要は、これまでの学習(トレーニング)用クラスタだけでなく推論(インファレンス)インフラにも拡大しており、これが汎用DRAM・NANDとプレミアム品であるHBMの両方で供給不足を招いている。競合のMicronも売上高が4倍に増加するなど、同様の需給逼迫パターンが業界全体で見られる。なお、今回の業績見通しには数十兆ウォン規模の賞与引当金が含まれており、調整後の実質的な営業利益は100兆ウォンを上回っていたとの指摘もある。
投資家の懸念と今後の見通し
好決算にもかかわらず株価が下落した最大の要因は、売上高がアナリスト予想の173兆ウォンをわずかに下回ったことにある。Morningstarのアナリスト、Jing Jie Yu氏は「今回のわずかな売上未達は、予想より緩やかだったDRAM価格上昇によるところが大きく、この分野の構造的な強さを織り込みつつあった投資家を動揺させた可能性がある」と分析している。
投資家の懸念の根底には、テクノロジー企業が巨額のAIインフラ投資を、確実なリターンが見通せないまま負債を積み増して続けられるのかという疑問がある。今回のAI関連メモリー特需が持続的な構造変化なのか、それとも周期的なメモリー市場のピークの再来に過ぎないのかを見極めようとする動きが、株価の乱高下という形で表れていると言える。