概要
ホンダは2026年7月、LGエナジーソリューションとの合弁工場として整備したオハイオ州施設で、AIデータセンター向けエネルギー貯蔵システム用バッテリーの生産を開始した。同工場はもともとEV用バッテリー製造を目的として建設されたが、EV需要の低迷を受けてホンダが米国でのEVプログラムを中止したことで転用を余儀なくされた形だ。共和党政権が連邦EV税控除を廃止したことが需要減速に追い打ちをかけ、ホンダは前会計年度に157億ドル(約2.3兆円)規模の評価損を計上するなど大きな打撃を受けていた。
急拡大する定置型蓄電市場
ホンダが参入する定置型蓄電市場は、AIデータセンターや電力グリッド安定化需要を背景に急成長している。2026年第1四半期だけで9.7ギガワット時のエネルギー貯蔵システムが導入されており、これはEV約12万台分の電力量に相当する。前年同期比では32%増と高い伸び率を維持しており、2030年代末までに年間110ギガワット時規模に達するとの予測もある。テスラはMegapackやPowerwallで同市場を先行しており、車両販売の約2倍に当たる30%の粗利益率を実現しているとされる。
業界全体の戦略転換
ホンダに先立ち、テスラ・フォード・GMもバッテリーを自動車製造から切り離した独立した収益事業として位置づける戦略を打ち出している。EV販売が軟調な局面でも、データセンターや再生可能エネルギーとの連携による定置型蓄電需要は拡大を続けており、自動車メーカーが培った電池技術・生産能力を活かせる分野として注目度が高まっている。ホンダはこの戦略転換を「EV需要が回復するまでの時間稼ぎ」と位置づけており、EV市場の長期的な成長を見据えつつ工場稼働と雇用を維持する狙いがある。