概要
Git 2.55が2026年6月29日に正式リリースされた。100名以上のコントリビューターが参加した本バージョンでは、Rustで実装されたコンポーネントがデフォルトでビルドされるようになったほか、過去コミットへの変更適用を簡略化する新コマンドgit history fixupが追加されるなど、開発者体験を向上させる多くの機能が盛り込まれた。
git history fixup:従来の煩雑な操作を一本化
従来、ステージ済みの変更を過去の特定コミットに取り込む作業は、git commit --fixupとgit rebase --autosquashを組み合わせる二段階の操作が必要だった。Git 2.55で導入されたgit history fixup <commit>は、この一連の流れを単一コマンドで実現する。指定したコミット以降のコミット履歴を自動的に再生成するため、意図が明確になり操作ミスのリスクも低減される。
パフォーマンスとシステム統合の強化
ファイルシステムモニターのLinux対応: macOSやWindowsですでに利用可能だったファイルシステムモニターがLinuxでも利用できるようになった。Linuxのinotifyサブシステムを活用し、デーモンがファイル変更パスを監視することで、従来のリポジトリ全体スキャンに代わるより効率的なgit statusの高速化が実現された。
並列フック実行: hook.<name>.parallel = trueという設定を追加することで、リントやユニットテストといった独立した複数のpre-commitフックを並行実行できるようになった。同時実行数はhook.jobsパラメータで制御可能だ。
ビットマップ生成の高速化: リーチャビリティビットマップの生成アルゴリズムが最適化され、大規模リポジトリでの処理時間が約612秒から294秒へとほぼ半減した。疑似マージビットマップの改善によってトラバーサルのスピードアップを維持しながら、メタデータ生成のオーバーヘッドも削減されている。
インクリメンタルなマルチパックインデックス更新: git repack --write-midx=incrementalコマンドにより、大規模リポジトリのメンテナンス時にメタデータを全件書き換えずに段階的に更新できるようになった。幾何学的な再パック戦略と組み合わせることで、パックレイヤー数が対数的に保たれる。
そのほかの注目変更点
--graph-lane-limitオプションで過剰に広がるコミットグラフを抑制できるようになり、ログ表示の可読性が向上した。また、複数のリモートをまとめた「リモートグループ」への同時pushサポートにより、複数拠点へのデプロイ操作が効率化された。セキュリティ面ではサーバーからの端末制御シーケンスをマスキングする機能も追加されている。