概要

AWSは2026年6月30日、最新世代のAWS Graviton5プロセッサを搭載したコンピュート最適化EC2インスタンスファミリー「C9g」および「C9gd」の一般提供(GA)開始を発表した。前世代のC8gと比べてvCPUあたり最大25%の性能向上を達成しており、バッチ処理・動画エンコーディング・科学的シミュレーション・分散分析・AIエージェント処理など、CPUを集中的に使用するワークロード向けに設計されている。インスタンスサイズはmediumから48xlargeまで11段階を用意し、ベアメタルオプションも提供される。最大構成では192 vCPUと384GBメモリ、100Gbpsのネットワーク帯域幅、72GbpsのEBS帯域幅を備える。

技術仕様と性能改善

Graviton5アーキテクチャの採用により、C9gはC8gと比較して複数の領域で大幅な性能向上を実現した。メモリにはDDR5 8800MT/sを採用しており、これはクラウドインスタンスとして最速クラスの転送速度を誇る。L3キャッシュは前世代比5倍に拡張され、キャッシュミスによるレイテンシ増大を抑制する。パケット処理性能は最大3倍向上し、ネットワーク集約型ワークロードや高頻度のリクエスト処理にも有利となる。ネットワーク帯域幅は平均15%、EBS帯域幅は平均20%それぞれ向上している。

ローカルNVMe SSDを搭載するC9gdバリアントでは、前世代比で最大30%のスループットおよびIOPS向上を達成しており、一時データの高速アクセスが求められるワークロードにも適する。また、Instance Bandwidth Configuration機能によりEBS帯域幅とVPCネットワーク帯域幅の割り当てを柔軟に調整できるほか、ENA Expressや最大128本のEBSボリューム接続にも対応する。

AWS Nitro隔離エンジンの初搭載

C9g/C9gdはコンピュート最適化インスタンスファミリーとして初めて「AWS Nitro隔離エンジン」を搭載する点でも注目される。このエンジンはRustで実装されており、仮想マシン間のメモリ・CPU状態・I/Oデバイスへのアクセスを形式検証(formal verification)によって保証する設計となっている。クラウド環境における多テナント分離の安全性をソフトウェアレベルでより厳密に担保するものであり、セキュリティ要件の高いエンタープライズワークロードへの採用を後押しする機能といえる。

提供リージョンとユースケース

現在は米国東部(オハイオ、バージニア北部)、米国西部(オレゴン)、欧州(フランクフルト)の各リージョンで利用可能であり、追加リージョンは年内に順次展開される予定だ。Savings PlansおよびSpot Instancesにも対応しており、コスト最適化の柔軟性も確保されている。AWSはターゲットユースケースとして、バッチ処理・動画エンコーディング・科学的モデリング・分散分析・CPU機械学習推論・HPC・ゲーミング・広告配信に加え、複数ステップの複雑なタスクを処理する「エージェンティックAI」ワークロードも挙げており、AIインフラとしての活用も想定している。