概要
Anthropicは2026年6月30日、科学研究者向けAIプラットフォーム「Claude Science」を正式に発表した。同社がClaude Codeと並ぶ主力製品として位置づけるこのプラットフォームは、Claude Opus 4.8を基盤とし、データベース・パイプライン・専門ツールを一元化した計算研究ワークベンチとして機能する。高レベルの指示を与えるだけで研究タスクを自律的に実行できる点が最大の特徴で、科学分野に特化したAI製品としてOpenAIの「GPT-Rosalind」に真っ向から対抗する存在となる。
Anthropicのライフサイエンス部門責任者であるEric Kauderer-Abramsは「我々のミッションは人類の長期的な幸福に貢献するAIを開発することであり、ライフサイエンスこそが最大の機会だと確信している」とコメントしている。
主な機能と技術的な詳細
Claude Scienceは、研究者が実際の科学業務で直面する多様なニーズに対応した複数の機能を備える。強力な計算クラスター上でコードを自律的に記述・実行する能力を持ち、遺伝学・化学・タンパク質生物学向けの専門ツールとも連携できる。創薬分野での活用も実証済みで、フェニルケトン尿症(PKU)の研究における薬物候補の絞り込みにClaude Scienceが活用されたことが報告されている。
また、再現性を最優先に設計されており、科学者が結果やソースを検証しやすい仕組みが整備されている。Anthropicの評価によれば、基盤モデルは科学プロジェクトにおいて「理系の大学院2年生相当」のパフォーマンスを発揮するとされ、ハーバード大学の物理学者による評価でもこの水準が確認されている。
グラントプログラムと支援体制
Claude Scienceの発表と同時に、研究者を対象としたグラントプログラムも公開された。最大3万ドルの支援を提供し、合計50件のプロジェクトを採択する計画で、学術・研究機関の研究者が幅広く応募できる。このプログラムはプラットフォームの実用性を検証しながら科学コミュニティとの関係を深める狙いがある。
競合との背景と戦略的意義
AI×科学の分野では、Google DeepMindがAlphaFoldをはじめとする一連の成果によって10年以上にわたってリードしてきた。しかし近年、そのモメンタムに変化が生じている。AlphaFoldでノーベル賞を受賞したJohn JumperがDeepMindを離れAnthropic入りしたことは、同社が科学AI分野で台頭していることを象徴している。
Anthropicは今後、顧みられない疾患(neglected diseases)に対する独自の創薬研究にも乗り出す方針を示しており、人道的な目的と製品の実証を兼ねた取り組みとして注目される。IPOが見込まれる中で製薬企業との契約獲得も視野に入れており、Claude Scienceは単なる研究ツールに留まらず、同社の事業戦略の中核を担うプラットフォームとして育てられていく見込みだ。