概要

2026年6月18日から24日にかけての6日間で、Google DeepMindの主要AI研究者4名がOpenAIおよびAnthropicへ相次いで転職し、Alphabetの時価総額は約2,690億ドルを失った。CNBCが報じたこの株価下落は1年以上ぶりの大幅なものとなり、非決算関連のイベントとして「テクノロジー史上最大級の時価総額消失」の一つとも評された。AI開発競争が激化する中、人材をめぐる構造的な問題がGoogleの企業価値に直撃した形だ。

流出した主要研究者

今回の流出で特に注目されたのが以下の4名だ。

  • Noam Shazeer:現代のAIに不可欠な技術「Transformer」の共著者で、GeminiのリードでもあったShazeerは6月18日にOpenAIへ移籍した。2000年からGoogleに在籍していたが、Character.AI創業期の3年間を経てGoogleが同社を27億ドルで買収した際に呼び戻された経緯を持つ。
  • John Jumper:AlphaFoldの開発を主導し、2024年にノーベル化学賞を受賞したDeepMindのディレクター。6月20日にAnthropicへ移籍した。
  • Jonas Adler:GeminiのAIコーディング機能の主要開発者。6月24日にAnthropicへ転職。
  • Alexander Pritzel:Geminiの事前学習(プレトレーニング)を担当するスペシャリスト。Adlerと同日の6月24日にAnthropicへ加わった。

ノーベル賞受賞者とTransformerの共著者という象徴的な人物が含まれていたことで、単なる人材流出を超えた「研究力そのものの喪失」として市場に受け止められた。

市場と投資家の反応

市場はこの一連の人材流出を深刻な警戒信号として受け止めた。Alphabetは2026年のAIインフラ投資として約1,900億ドルを見込んでいるが、分析家は「買っているのは持続可能な競争優位性ではなく、減価していく資産だ」と指摘した。研究を支える人材が失われれば、巨額投資の効果も大きく損なわれるとの懸念が広がった格好だ。

一方で、カバーするアナリスト33社のうち28社が買いの格付けを維持しており、長期的な見通しを楽観視する向きも依然として存在する。

AI人材獲得競争の構造的問題

研究者がGoogleを離れる要因として、組織の官僚主義や計算リソース(コンピュート)へのアクセス制限が挙げられている。「組織環境が研究者の野望に合致しなければ、どれだけの金銭でも研究者の忠誠心は買えない」との分析が示すように、報酬面だけでは解決できない問題が存在する。

OpenAIとAnthropicはIPO(新規株式公開)への準備が進む中で、株式報酬を武器にトップ人材を引き付けやすい状況にある。このAI人材の争奪戦は今後も続く見通しであり、Googleにとってはトップクラスの研究者の確保がAI開発の主導権を握る上での最重要課題となっている。