概要
2026年6月18日、トランプ大統領はTruth Socialに「AppleはIntelと共に米国内でチップを設計・製造することに合意した」と投稿し、業界に衝撃を与えた。この発表を受けてIntelの株価は10.5%(1株あたり12.72ドル)急騰し、133.82ドルを付けた。しかし、AppleもIntelも公式コメントを出しておらず、Intelは「潜在的な合意についてはコメントしない」と述べるにとどまっている。ウォール・ストリート・ジャーナルは2026年5月に両社が1年以上の交渉を経て暫定合意に達したと報じており、今回のトランプ大統領の発言はその流れを受けたものとみられる。
Intel 18A-Pプロセスの技術的背景
今回の提携の核心となるのがIntelの次世代プロセスノード「18A-P」だ。Intelは6月16日のVLSIシンポジウムで18A-Pがリスク生産(試験量産)フェーズに入ったと発表したばかりで、従来の18Aと比べて「性能と電力効率において意味のある向上」をもたらすとしている。報道によれば、AppleはこのIntel 18A-Pプロセスを廉価帯向けチップに活用する見通しで、フラッグシップ向けの先端チップはTSMCが引き続き担うとされる。TSMCはAppleのチップ生産の90%超を維持する形となり、今回の提携はTSMCへの依存を全面的に置き換えるものではなく、製造拠点の分散を目的とした戦略的な補完関係として位置づけられている。
地政学的・市場的な意味合い
アナリストのDan Ivesはこの提携が、AppleのTSMC依存低減とベトナム・インド・米国を含む製造拠点の多様化戦略の一環だと指摘する。また、米国政府はIntelに対して約10%の株式を保有しており、トランプ大統領は「Intelの企業価値が9カ月で5,000億ドル以上増加した」と強調し(Intelの時価総額は約1,000億ドルから約6,000億ドルへ拡大し、政府保有分の価値は約600億ドルとされる)、国内製造推進と政府利益を結びつけるかたちで今回の発表を行った。一方、Cato Instituteはこうした状況について「政府による民間企業への前例のない関与」との懸念を示している。Intelにとっては、Appleという顧客の獲得が他の潜在顧客に対して自社の製造能力を証明する効果も期待されており、ファウンドリ事業の信頼性向上という副次的な意義も大きい。
今後の焦点
AppleとIntelの正式な契約内容や具体的な生産量の詳細は依然として未公表であり、両社からの公式確認が業界全体の焦点となっている。Intelが2026年7月23日に予定する決算発表での経営陣コメントが、契約の実態を明らかにする最初の機会になると見込まれている。また、ティム・クックCEOはAI企業需要によるメモリ・ストレージチップのコスト高騰を背景にiPhone価格の値上げを示唆しており、米国内製造コストの増加をAppleがどのように吸収・転嫁するかも注目される。